カット代が前年同月比で17.2%増えた、という数字を見ると、「うちのカット単価も上がる余地があるのか」「客単価はもっと取れるのか」と考えたくなります。ホットペッパービューティーアカデミー『数字で見る美容業界』の2026年7月分では、カット代が675円で前年同月比+17.2%と、はっきり伸びました。ただ、この金額は1世帯あたりの月平均支出であって、サロンのカット料金や客単価ではありません。この記事では、数字の中身と読み違えやすい点、自店で確かめる手順を順番に整理します。
この記事を3行で解説
- 2026年7月の「理美容サービス計」の支出は3,648円(前年同月比+7.5%)、カット代は675円(+17.2%)、パーマネント代は177円(+3.5%)だった。
- 数字は「ふたり以上世帯」の1世帯あたり月平均で、利用していない世帯も母数に含む。客単価やカット料金そのものではない。
- 前年7月の水準が低かったことが+17.2%を押し上げた可能性があり、単月の伸びで値上げ余地は判断できない。自店の前年同月比・客数・来店間隔で確かめる。
1. 2026年7月の理美容サービス支出はどう動いたのか
要点:2026年7月の理美容サービス計は3,648円(前年同月比+7.5%)で、カット代が+17.2%と全体を引っ張りました。
これから、公表された数字そのものを確認します。ホットペッパービューティーアカデミーは、総務省『家計調査』の品目分類をもとに、ふたり以上世帯の月別消費を毎月公開しています。2026年7月分は次のとおりです。
| 項目 | 2026年7月の金額 | 前年同月比 | 前月比(増減額) |
|---|---|---|---|
| 理美容サービス計 | 3,648円 | +255円(+7.5%) | -45円 |
| カット代 | 675円 | +99円(+17.2%) | +31円 |
| パーマネント代 | 177円 | +6円(+3.5%) | +3円 |
〔機関:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/資料名:数字で見る美容業界「毎月の美容消費」2026年7月分(サイト上に「10/1 更新」と表示、2026年10月11日閲覧)〕(数字で見る美容業界)。原データは総務省『家計調査』で、同アカデミーが品目分類をもとに作成した、ふたり以上世帯の月別消費です。
調査元はPOINT欄で、理美容サービス計が前年を上回ったこと、内訳ではカット代の+17.2%が全体を大きく牽引し、パーマネント代も+3.5%のプラスだったことを示しています。そのうえで、この支出の上昇については、単純な利用増やメニュー追加だけでなく、物価高や材料費高騰に伴うサロン側の施術料金の価格改定が影響している可能性も十分に考えられる、と述べています。
2. カット代675円は客単価ではない
要点:675円は、ふたり以上世帯1世帯あたりの月平均です。美容室を利用していない世帯も母数に含まれます。
これから、この数字を客単価と混同してしまう理由と、見分け方を説明します。
2-1 ページの注記が示す定義
同ページには、値は各世帯ごとの平均で、利用者ではない人も母数に含む、という注記があります。つまり、その月にカットへ行った世帯と行かなかった世帯をまとめて平均した数字です。1回のカット料金や、来店したお客様1人あたりの支払額を表すものではないため、675円から自店の価格水準を逆算することはできません。〔機関:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/資料名:数字で見る美容業界「毎月の美容消費」2026年7月分(サイト上に「10/1 更新」と表示、2026年10月11日閲覧)〕
2-2 対象世帯と品目の範囲
対象は、ふたり以上世帯です。単身世帯は含まれていません。また、品目名は「理美容サービス」です。「理美容サービス」という名称からは、理容の支出も含む可能性があり、美容室だけの数字とは限りません。ここも、そのまま自店の客層に当てはめられない理由になります。家計の中で美容にどれだけ使われているかを見る別の指標については、美容消費係数3.05%を読む注意点の記事で整理しています。
3. 前年比+17.2%をどう読むか
要点:前年7月は前年6月より低い試算で、そのことが+17.2%を大きく見せた可能性があります。単月の伸びだけで値上げ余地は判断できません。
これから、前年比の裏側にある土台の動きと、月ごとのブレを確認します。
3-1 前年同月の土台を逆算してみる
ページが示す前年比の増減額から、前年7月の金額を計算できます。カット代は675円から99円を引いて576円、理美容サービス計は3,648円から255円を引いて3,393円です。円単位の四捨五入があるため、±1円程度の誤差を含みます。さらに、2026年6月分(カット代644円・前年同月比+4.4%)から前年6月を逆算すると約617円になります。前回の記事で扱った6月分は、パーマ代が前年比-9.4%だった月の記事にまとめています。
| カット代(1世帯あたり月平均) | 6月 | 7月 |
|---|---|---|
| 前年(逆算した試算) | 約617円 | 576円 |
| 2026年(公表値) | 644円 | 675円 |
〔機関:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/資料名:数字で見る美容業界「毎月の美容消費」2026年7月分(サイト上に「10/1 更新」と表示、2026年10月11日閲覧)および同6月分(サイト上に「9/1 更新」と表示、2026年9月2日閲覧)〕。前年の金額は公表された前年比から当編集部が計算した試算で、調査元が示した数値ではありません。
この計算では、前年は6月から7月にかけて約617円から576円へ下がり、今年は644円から675円へ上がっています。前年7月が低かった分だけ、今年7月の前年比が大きく出た可能性があります。これは計算にもとづく推測で、原因を断定する材料はありません。
3-2 月ごとのブレは大きい
カット代の前年同月比は、6月が+4.4%、7月が+17.2%でした。同じ年の隣り合う月で、これだけ動きが違います。調査元は過去1年の傾向について、一部の月を除いて前年比プラスの月が多いと説明しています。前年比プラスの月が多いことと、1つの月の+17.2%を基準にすることは別の話です。
3-3 価格改定の影響は切り分けられない
調査元は、価格改定の影響が考えられるとしつつ、利用増やメニュー追加の可能性も並べています。来店回数が増えたのか、1回あたりの支払額が上がったのかを分けた数字は、この統計にはありません。値上げに対するお客様の受け止め方は、値上げに73.3%が納得したリクルート調査の記事のように、利用者に直接聞いた調査で確認するほうが適しています。
4. 自店で確かめる3つの数字
要点:値上げや客単価の判断は、自店の前年同月比・客数・来店間隔で行います。業界統計は確認する論点を教えてくれるものです。
これから、業界の数字を見て気になったときに、自店のデータで何を確かめるかを整理します。一般的な進め方の例です。
| 見る数字 | 出し方 | 分かること |
|---|---|---|
| カットの施術件数 | 7月の件数を前年7月と比べる | 来店が増えたのか、減ったのか |
| カットの平均単価 | カット売上÷カット件数を前年同月と比べる | 価格改定が実際の支払額に効いているか |
| 来店間隔 | 再来店客の前回来店からの日数の平均を前年と比べる | 来店頻度が変わったか |
件数が変わらず単価だけ上がっていれば、価格改定が定着している可能性があります。件数が減って単価が上がっているなら、客数の変化も同時に見る必要があります。どちらの場合も、判断に使うのは自店の数字です。業界全体の+17.2%を自店の目標にすると、実態とずれた価格設定になりかねません。
制度やコストを含めた業界全体の動きは、美容室経営に効く業界動向2026のまとめ記事で通しで確認できます。
5. まとめと重要ポイント
2026年7月の理美容サービス計は3,648円(前年同月比+7.5%)、カット代は675円(+17.2%)、パーマネント代は177円(+3.5%)でした。ただしこれはふたり以上世帯の1世帯あたり月平均で、利用していない世帯も含みます。客単価やカット料金ではありません。前年7月の水準が低かったことが前年比を押し上げた可能性があり、6月の+4.4%との差からも月ごとのブレが大きいと分かります。価格や客単価の判断は、自店の件数・平均単価・来店間隔の前年同月比で行ってください。
- 675円は世帯平均で、客単価ではない。
- 前年比+17.2%は、前年の土台が低かった可能性を含めて読む。
- 判断には自店の件数・平均単価・来店間隔を使う。
よくある質問
Q1. カット代+17.2%は、美容室のカット料金が17.2%上がったという意味ですか。
いいえ。1世帯あたりの月平均支出の前年同月比で、料金の改定率ではありません。調査元は価格改定の影響が考えられるとしていますが、利用増などと切り分けた数字は示していません。
Q2. この数字は、自店の客単価の目安に使えますか。
使えません。利用していない世帯を母数に含み、理美容サービス全体の区分でもあるためです。客単価は自店の売上と客数から出してください。
Q3. 8月分も7月と同様に高い伸びになりますか。
分かりません。6月が+4.4%、7月が+17.2%と月ごとのブレが大きく、先を見通せる根拠はこの統計にありません。
出典
- 株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「数字で見る美容業界」毎月の美容消費 2026年7月分(サイト上に「10/1 更新」と表示、2026年10月11日閲覧)/同6月分(サイト上に「9/1 更新」と表示、2026年9月2日閲覧)
https://hba.beauty.hotpepper.jp/search_sp/(原データ:総務省『家計調査』の品目分類をもとに同アカデミー作成、ふたり以上世帯の月別消費)
【ご注意】本記事は2026年10月11日時点で公表されている統計をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。統計の数値は後日更新・改定される場合があります。個別の料金設定や経営判断は、自店のデータを確認のうえ、必要に応じて税理士・中小企業診断士などの専門家へご相談ください。
更新履歴:2026年10月11日 新規公開


