求人媒体を探しはじめると、リジョブやリクエストQJ、ホットペッパービューティーなど選択肢が多くて、結局どこに載せればいいのか迷ってしまいますよね。しかも一度契約すると、月額のランニングコストが1年単位でかかる媒体もあります。だからこそ、なんとなくの口コミやイメージで決めてしまうと、お金だけかかって応募が来ない、という状態になりがちです。この記事では、美容室の求人媒体の種類と、自社のエリアで一番効く媒体を数字で見極める選び方を、順番に整理していきます。感覚ではなく事実で決められるようになると、採用の景色はかなり変わってきます。
この記事を3行で解説すると、こうなります。
- 求人媒体は成果報酬型と月額掲載型の2種類。払っているのは採用ではなく、求職者に見つけてもらうきっかけです。
- 成果報酬型はできるだけ全部載せ、コストのかかる月額型は自社エリアで一番強い媒体を数字で見極めて絞ります。
- 媒体で露出を最大化したうえで、応募が集まるかどうかは求人のコンセプトで決まります。
1. 美容室の求人媒体とは?まず全体像を押さえる
これから美容室の求人媒体の全体像について解説します。ここで押さえておきたいのは、次の3つです。
- 1-1 求人媒体は大きく2種類に分かれる
- 1-2 媒体に払っているのは「見つけてもらうきっかけ」
- 1-3 採用は集客と同じ流れで考えると整理しやすい
1-1 求人媒体は大きく2種類に分かれる
美容室の求人媒体は、料金のしくみで見ると成果報酬型と月額掲載型の2つに分けられます。この違いを最初に理解しておくと、後の判断がぐっと楽になります。
成果報酬型は、採用が決まったときだけ費用が発生するタイプです。掲載しているだけならコストはかからないので、経営側のリスクが小さいのが特徴です。一方の月額掲載型は、応募や採用の有無にかかわらず、掲載期間中はずっと料金がかかります。契約が年単位になっていることも多く、載せると決めたら一定期間はランニングコストを抱えることになります。
美容業界に特化した媒体としては、リジョブやリクエストQJ、キレイビズなどが知られています。総合の求人サイトやハローワーク、紙のフリーペーパー、スタッフや知人からの紹介、自社の採用ページなども、広い意味ではすべて求人媒体です。まずは自社が今どのタイプにいくら払っているのかを、一度書き出してみるところから始めると整理しやすいです。
1-2 媒体に払っているのは「見つけてもらうきっかけ」
求人媒体に払っているお金は、採用そのものへの対価ではありません。転職を考えている美容師に、自社を見つけてもらうきっかけへの対価です。ここを取り違えると、媒体選びの基準がぶれてしまいます。
この構造は、集客で使うホットペッパービューティーや、通販のAmazonやWeb広告とまったく同じです。サービスを提供する側は、利用者に見つけてもらう場所を用意し、そこへの露出にお金を払わせています。だから成果報酬型のように掲載自体が無料に近いものは、思いつくかぎり載せておいたほうが、見つけてもらえる機会は増えます。
関西で複数の美容サロンを展開する杉本遼平さんは、採用の悩みを分解すると多くは「そもそも応募が来ない」ところにあると話します。だとすれば、まずやるべきは見つけてもらえる入り口をできるだけ広げること。媒体は採用してくれる魔法の箱ではなく、あくまで出会いの入り口だと考えると、力の入れどころが見えてきます。
1-3 採用は集客と同じ流れで考えると整理しやすい
採用は、集客とほとんど同じ流れでとらえると理解しやすくなります。認知、興味関心、比較検討、そして応募という行動。この順番は、新規のお客様が来店するまでの流れとそっくりです。
お客様は、髪の悩みを持ち、今のサロンに物足りなさを感じ、媒体や紹介で探して来店します。求職者も同じで、今の職場に不満があり、転職したい気持ちが内側から生まれ、いいサロンはないかと探し、いくつかの中から応募先を選びます。つまり、認知から比較検討までが応募の手前にあり、そこを通らないと応募には届きません。
この流れで見ると、求人媒体が担っているのは認知と興味関心の部分だとわかります。媒体はあくまで途中の橋渡しで、最後に応募するかどうかは求人の中身が決めます。採用がうまくいかないとき、媒体だけを増やしても解決しないのは、この後半の中身が弱いことが多いからです。
2. 求人媒体を選ぶ前に決めておきたい3つのこと
これから媒体を選ぶ前の準備について解説します。ここで整理しておきたいのは、次の3つです。
- 2-1 採用したいエリアと人物像を先に決める
- 2-2 予算は年間で考える
- 2-3 応募の前に「載せる中身」を用意する
2-1 採用したいエリアと人物像を先に決める
媒体を比べる前に、どのエリアで、どんな人を採用したいのかを先に決めておきます。ここが曖昧なままだと、どの媒体が自社に合うのかを判断できません。
求人媒体の強さは、エリアによって大きく変わるからです。全国的に有名な媒体でも、自社の出店エリアではあまり見られていない、ということは普通に起こります。求職者にとっては、たまたまその時に見つけた媒体が一番身近な媒体になるので、自社が採る地域で露出が多いかどうかが実際の効き目を左右します。
たとえば同じ兵庫県でも、三宮と明石、加古川では、よく見られている媒体も検索結果も違ってきます。だからこそ、まず採用したいエリアをできるだけ具体的に定め、そのうえで「今の職場に不満はあるけれど、これから頑張りたい人」といった人物像をざっくり描いておく。この2つが決まって、はじめて媒体の比較が意味を持ちます。
2-2 予算は年間で考える
採用にかける費用は、1件ごとではなく年間で考えるのがおすすめです。単発で見ると高く感じても、年間で見れば投資として回収できるかどうかを冷静に判断できます。
成果報酬型は1人あたりの費用が変動しやすく、タイミングによっては高額になることもあります。月額型は掲載し続けるかぎりコストがかかります。どちらも1件だけを切り取ると判断がぶれるので、年間の採用費として上限を決めておくほうが管理しやすくなります。
杉本さんは、採用費の考え方として、採用した美容師が生む売上や再来の見込みから、かけた費用を1年ほどで回収できるかを天秤にかける、と説明しています。目安として年間の採用費が売上に対して大きくなりすぎないように意識しておくと、媒体を増やすときの歯止めにもなります。金額の適正水準は店舗の規模や出店状況で変わるので、自社の数字で一度計算してみてください。
2-3 応募の前に「載せる中身」を用意する
どんなに強い媒体に載せても、求人の中身が弱ければ応募は増えません。媒体選びと同じくらい、載せる内容の準備が大切です。
求人媒体を並べて見るとわかりますが、多くのサロンが書いていることはよく似ています。給料がいい、休みが多い、人間関係がいい。求職者からすると、どこも同じに見えて、何を基準に選べばいいか迷ってしまいます。同じ条件を並べるだけでは、露出を増やしても素通りされてしまうのです。
スーパーのレジ横にガムを置くように、媒体で一番いい場所を取っても、そこに置いてあるものに魅力がなければ手に取ってもらえません。だから媒体を決めるのと並行して、自社の求人で何を一番に伝えるのかを先に用意しておく。この中身のつくり方は、後半でくわしく触れます。
3. 自社エリアで一番強い媒体を数字で見つける方法
これから媒体を数字で見極める方法について解説します。ここで押さえたいのは、次の3つです。
- 3-1 イメージや口コミで決めない
- 3-2 検索で強い媒体を調べる
- 3-3 広告の出稿量で強い媒体を調べる
3-1 イメージや口コミで決めない
媒体選びで一番避けたいのは、誰かが良いと言っていた、という理由で決めてしまうことです。判断は、自分の目で確かめた事実にもとづいて行います。
求人は集客と違って、求職者が媒体を使う間隔がとても長いという特徴があります。髪はすぐ伸びるので集客媒体は何度も使われますが、転職は何年かに一度です。そのため、業界側では有名な媒体でも、いま転職しようとしている求職者には知られていない、ということが起こります。実際、名の知れた大企業でも若い世代の認知度が下がっているという話は珍しくありません。認知のギャップは、自分たちが思う以上に大きいのです。
だからこそ、有名だから載せる、知り合いが勧めたから載せる、ではなく、いま自社のエリアで求職者に見られている媒体はどれかを、数字で確かめにいきます。次の2つの調べ方が、その具体的な手順になります。
3-2 検索で強い媒体を調べる
1つ目は、検索で上位に出てくる媒体を調べる方法です。求職者になったつもりで検索して、どの媒体が強いのかを自分の目で確認します。
媒体を使って転職する人は、まだ理想のサロンに出会っていない人です。知り合いのつてがなければ、まずは検索やSNSで探します。だから、自社のエリア名と職種で検索したときに上位に出る媒体は、そのまま求職者が最初に目にする媒体になりやすいのです。
やり方はシンプルです。まずブラウザのシークレットウィンドウ、スマホならプライベートモードを開きます。普段の検索履歴の影響を消して、まっさらな状態で調べるためです。そのうえで、たとえば「神戸 美容師 求人」のように、採用したいエリア名と職種で検索します。三宮や元町くらいまで絞ったほうが実態に近づきます。上から順に見て、検索で強く出ている媒体を書き出しておきます。ここは比較的、日によって大きくは変わりません。
3-3 広告の出稿量で強い媒体を調べる
2つ目は、広告の出稿量が多い媒体を調べる方法です。たくさん広告費を投じている媒体は、それだけ多くの求職者の目に触れているという事実の裏づけになります。
広告は大きく2か所を見ます。ひとつは検索結果の上部に出るスポンサー枠です。この枠は入札のしくみで表示が決まるため、一度だけ見て判断せず、複数回、できれば別のブラウザでも確認して、繰り返し出てくる媒体を拾います。もうひとつはInstagramなどのSNS広告です。SNS広告は位置情報と結びつくので、出店エリアと相性を確かめるのに向いています。
SNS広告を調べるときは、自分のアカウントだと普段の履歴に引っ張られてしまうので、狙いたい人物像に近いスタッフのアカウントを借りるのがコツです。採用したいエリアの近くで、ストーリーズやリールを何度も更新しながら20回ほど眺め、出てきた求人広告に正の字で印をつけていきます。一番多く出てきた媒体が、そのエリアで一番広告費を出している媒体、つまり露出が大きい媒体だとわかります。新しいエリアに出すたびに、この確認を毎回やり直すのがポイントです。
4. 応募を増やす媒体の使い方とコンセプトのつくり方
これから調べた結果をどう使うかについて解説します。ここで押さえたいのは、次の3つです。
- 4-1 成果報酬型はできるだけ全部載せる
- 4-2 月額型はエリアで一番強い媒体に絞る
- 4-3 求人はコンセプトで差をつける
4-1 成果報酬型はできるだけ全部載せる
成果報酬型の媒体は、思いつくかぎり全部載せておくのがおすすめです。掲載自体にコストがかからないぶん、見つけてもらう入り口を無料で増やせるからです。
前半で触れたとおり、媒体に払っているのは見つけてもらうきっかけへの対価です。成果報酬型は採用が決まってはじめて費用が発生するので、載せている状態を保つこと自体にはお金がかかりません。だとすれば、入り口を狭める理由はほとんどありません。
複数の媒体に載せておくと、求職者がどこで自社に出会うかの選択肢が広がります。求職者によって普段見ている媒体はばらばらなので、間口を広げておくほど出会いの確率は上がります。まずは成果報酬型を棚卸しして、載せられるものは載せておく、というところから始めてみてください。
4-2 月額型はエリアで一番強い媒体に絞る
コストが固定でかかる月額型は、自社のエリアで一番強い媒体に絞って載せます。ここは3で調べた数字をそのまま判断材料に使います。
月額型は一度契約すると、応募の有無にかかわらず掲載期間中は料金がかかります。だから、なんとなく複数に載せると固定費だけがふくらみます。検索の強さと広告の出稿量で点数をつけ、自社が採りたいエリアで上位に来た媒体から、予算の範囲で優先的に載せるのが合理的です。
ここまでを整理すると、成果報酬型はできるだけ広く、月額型は数字で選んで狭く、という使い分けになります。この組み合わせなら、限られた予算の中で、見つけてもらうきっかけを一番多くつくれます。あとは載せる中身、つまりコンセプトの勝負です。
4-3 求人はコンセプトで差をつける
応募が集まるかどうかは、最後はコンセプトで決まります。コンセプトとは、自社が求職者にどんな価値を約束するのかを一言で表したものです。
杉本さんのグループでは、陰口が嫌いな美容師募集という打ち出しで、多くの応募を集めたそうです。中身は人間関係の良さという、他店も言っていることと同じです。ただ、同じ主張でも切り口を変えたことで、他とはっきり違って見えました。しかもこの言葉には、店舗で一番思いやりのある人を毎年みんなで選び、その人が店長になるという実際のしくみが裏づけとしてありました。言葉と現場が一致していることが、信頼につながります。
コンセプトをつくるときは、転職を考える美容師が抱える不満や不安を、できるだけたくさん書き出すところから始めます。そのうえで、他店がまだ言っていない新鮮さと、多くの人がうなずく共感の両方を満たすものを探します。共感は自分の主観で決めず、周りに聞いて確かめるのが大切です。見つけた切り口は、自社の事実で裏づけて、はじめて説得力を持ちます。強い媒体に、この一手間をかけた求人を載せることで、露出が応募へと変わっていきます。
まとめ:媒体は数字で選び、中身で応募につなげる
美容室の求人媒体は、成果報酬型と月額掲載型の2種類に分かれます。媒体に払っているのは採用ではなく、求職者に見つけてもらうきっかけです。だから成果報酬型はできるだけ全部載せ、コストのかかる月額型は自社のエリアで一番強い媒体に絞ります。強い媒体を見極めるときは、口コミやイメージではなく、シークレットウィンドウでの検索順位と、検索広告やSNS広告の出稿量という数字で判断します。そして媒体で露出を最大化したうえで、応募が集まるかどうかは求人のコンセプトで決まります。他店と同じ条件ではなく、切り口を変え、自社の事実で裏づけた打ち出しが、露出を応募へと変えていきます。
とくに大切なポイントは次のとおりです。
- 求人媒体は成果報酬型と月額型の2種類。まず自社の契約を棚卸しする。
- 媒体は見つけてもらうきっかけ。採用は集客と同じ流れで考える。
- 採用したいエリアと人物像、年間予算を先に決める。
- 強い媒体はイメージでなく、検索順位と広告出稿量の数字で見極める。
- 成果報酬型は広く、月額型はエリア最強に絞る。
- 最後は求人のコンセプトで差をつける。切り口を変え、事実で裏づける。
よくある質問
Q1. 求人媒体はいくつ載せるのが正解ですか?
数の正解は決まっていませんが、考え方はシンプルです。成果報酬型は掲載自体にお金がかからないので、載せられるものはできるだけ載せて入り口を広げます。月額型はコストが固定でかかるため、自社のエリアで検索と広告出稿量が強い媒体に絞ります。まずは今の契約を棚卸しして、成果報酬型を増やし、月額型は数字で選び直す、という順番がおすすめです。
Q2. 有名な求人サイトに載せれば応募は増えますか?
有名かどうかと、自社のエリアで効くかどうかは別の話です。求人媒体は転職のたびにしか使われないため、業界で有名でも、いま転職しようとしている求職者に見られているとは限りません。エリアによって強い媒体は変わるので、採用したい地域で検索と広告の出稿量を実際に確かめてから決めるほうが、費用対効果は高くなります。
Q3. 媒体を選んでも応募が来ないときは何を見直せばいいですか?
まず、求人の中身、つまりコンセプトを見直してみてください。多くのサロンは給料や休み、人間関係の良さといった似た条件を並べていて、求職者からは違いが見えにくくなっています。他店がまだ言っていない切り口を探し、自社の実際のしくみで裏づけると、同じ露出でも応募につながりやすくなります。媒体の強さと中身の魅力は両輪だと考えるのがおすすめです。

▶ 採用の全体像と考え方は美容師の採用方法7選(採用ガイド)にまとめています。

