指名が増えると、収入が安定して、仕事のやりがいも変わってきます。とはいえ「技術は磨いているのに、なかなか指名につながらない」と感じている方は多いのではないでしょうか。指名は、カット技術の高さだけで決まるものではありません。お客様が「この人にまた任せたい」と思う体験を、どうつくり、どう続けていくか。ここが指名の分かれ道になります。この記事では、指名が増えない原因を整理したうえで、明日から実践できる5つのステップと、個人の頑張りに頼らずサロン全体で指名を増やしていく仕組みの作り方までまとめました。
この記事を3行で解説
- 指名は技術力だけでなく、お客様が「また任せたい」と感じる体験の積み重ねで決まります。
- 第一印象からアフターフォローまでの5ステップを丁寧に設計すると、指名は安定して増えていきます。
- 個人任せにせず、接客の質をサロン全体で揃える仕組みにすると、指名は再現できるようになります。
1. 美容師の指名とは?指名が増えると何が変わるか
これから美容師の指名とは何か、そして指名が増えると何が変わるのかについて解説します。まずは次の内容を押さえておきましょう。
- 1-1 指名とは、お客様が担当者を名指しで選ぶこと
- 1-2 指名が増えると起きる3つの変化
1-1 指名とは、お客様が担当者を名指しで選ぶこと
指名とは、お客様が予約や来店の際に「この美容師にお願いしたい」と担当者を名指しで選ぶことを指します。新規のお客様が次回から同じ担当者を選ぶようになれば、それは指名という形でお店に残っていきます。
指名には多くの場合、通常メニューに指名料が加わります。指名料の有無や金額はお店によって異なるため、自店の設定を確認しておくと、お客様への説明もスムーズになります。お客様が指名料を払ってでも選ぶということは、その担当者に金額以上の価値を感じているということでもあります。
ここで大切なのは、指名を「技術の勝負」だと思い込まないことです。株式会社VOCが講座で伝えているフレームに、表現力は言語に勝るという考え方があります。人は判断のほとんどを理屈ではなく、なんとなくの感覚で下しています。技術の説明そのものよりも、その人と過ごす時間の心地よさが、指名するかどうかを左右していきます。
1-2 指名が増えると起きる3つの変化
指名が増えると、働き方も、お店の数字も変わっていきます。主な変化は次の3つです。
- 収入が安定する。指名のお客様が積み上がると、来店の予測が立てやすくなり、売上の波が小さくなります。
- お客様一人あたりの価値が伸びる。VOCは顧客生涯価値を、平均客単価×来店頻度×継続年数×利益率で捉えます。指名は来店頻度と継続年数を押し上げるため、この掛け算全体が大きくなります。
- 提案が通りやすくなる。信頼関係ができているお客様は、髪質改善や店販の提案にも耳を傾けてくれます。押し売りではなく、必要なものを届けやすくなります。
指名は一人の担当者の収入だけでなく、お店全体の安定にもつながっていきます。だからこそ、個人の努力任せにせず、お店として増やしていく視点が大切になります。
2. 指名が増えない美容室によくある3つの原因
これから指名が増えない原因について解説します。心当たりがないか、次の3つを確認してみてください。
- 2-1 技術だけで勝負しようとしている
- 2-2 施術で終わり、関係が続く設計がない
- 2-3 スタッフ個人任せで、指名が仕組みになっていない
2-1 技術だけで勝負しようとしている
技術力は美容師の土台ですが、指名はそれだけでは決まりません。お客様の多くは、仕上がりの良し悪しをプロほど正確には見分けられないからです。むしろ覚えているのは、施術中の会話や、心地よかった時間の記憶だったりします。
VOCの販売力の考え方では、接客は警戒心を下げる、好感度を上げる、頼りにしてもらう、提案する、という流れで進みます。このうち提案よりも前の段階で、指名するかどうかのほとんどが決まっていきます。技術の研鑽と同じ熱量で、警戒心を下げる関わり方を磨いていくことが指名への近道です。
2-2 施術で終わり、関係が続く設計がない
切って終わり、染めて終わりで、お客様を見送っていないでしょうか。指名は一度の施術ではなく、次につながる関わりの中で育っていきます。施術後のフォローや次回の提案がないと、せっかく満足してもらえても、その記憶は時間とともに薄れてしまいます。
他店にも良い美容師はたくさんいます。関係を続ける設計がないままだと、次に髪が伸びた頃には別のお店の広告が目に入り、そちらへ流れてしまうこともあります。満足で終わらせず、続く関係へ変えていく一手間が指名を分けます。
2-3 スタッフ個人任せで、指名が仕組みになっていない
指名の多いスタッフがいる一方で、伸び悩むスタッフもいる。この差が個人の才能やセンスの問題として片づけられているお店は少なくありません。ここを個人任せにしている限り、指名はその人が辞めたら消えてしまいます。
VOCは、人ではなく仕組みにアプローチする考え方を大切にしています。指名を生む接客のポイントを言葉にして、誰がやっても一定の質を再現できる状態にする。そうすることで、特定のスターに依存しない、お店として強い指名構造が育っていきます。
3. 指名を増やす5つのステップ
これから指名を増やす具体的な5つのステップについて解説します。来店から見送り、その後までを順番に設計していきます。
- 3-1 第一印象で警戒心を下げる
- 3-2 カウンセリングで期待を超える
- 3-3 ストーリーで思いを伝える
- 3-4 次回予約とアフターフォローで関係を続ける
- 3-5 お客様の情報を記録して次回に活かす
3-1 第一印象で警戒心を下げる
初めてのお客様は、少なからず緊張しています。ここで最初にやることは、技術の話でも提案でもなく、その緊張をほぐすことです。笑顔で迎え、目線を合わせ、簡単な自己紹介を添えるだけで、お客様は心の壁を少し下ろしてくれます。
人の印象は、話す言葉だけでなく、声のトーンや表情、しぐさからも伝わります。だからこそ、何を話すかと同じくらい、どんな雰囲気で迎えるかが効いてきます。自分から壁をつくらず、心を開いている空気を出すことが、指名の入口になります。
3-2 カウンセリングで期待を超える
カウンセリングは、要望を聞き取るだけの時間ではありません。お客様が言葉にできていない悩みまで一緒に見つけにいく時間です。ここで期待を超えられると、お客様は「この人はわかってくれる」と感じ、指名へと近づいていきます。
VOCの接客の4大価値という考え方では、価値は基本価値、期待価値、願望価値、予想外価値の4段階に分かれます。あって当然の基本や期待に応えるだけでは満足止まりで、感動は生まれません。言われていない願望や、予想を超える一言に手が届いたとき、満足がファン化に変わっていきます。
3-3 ストーリーで思いを伝える
提案が響くかどうかは、商品やメニューの説明の上手さだけでは決まりません。人は理屈より感情で動くからです。同じトリートメントをすすめるにしても、成分の説明を並べるより、あなたがなぜそれを大切にしているのかという思いが乗ったほうが、心に届きます。
VOCが伝えるストーリーテリングは、未来、過去、現在の3つで組み立てます。目指しているサロンの姿という未来、そう思うようになったきっかけという過去、だからこれをおすすめしたいという現在。この流れで話すと、売り込みではなく、一緒に叶えたい提案として受け取ってもらえます。
3-4 次回予約とアフターフォローで関係を続ける
指名を安定させる決め手は、帰り際とその後にあります。施術の満足度が高いうちに次回のイメージを共有し、次の来店の見通しを一緒に描いておくと、お客様は予約の手間が省け、他店へ流れにくくなります。
来店後の連絡も効果的です。その日のうちに、来店のお礼と、話した内容、次回に向けた提案を一言添えるだけで、お客様の記憶にあなたが残ります。連絡先やSNSでのやり取りができる関係なら、伸びてきた頃のひと声が次の来店のきっかけになります。関係を切らさない小さな接点が、指名を育てていきます。
3-5 お客様の情報を記録して次回に活かす
指名される美容師は、記憶ではなく記録で関係を続けています。使った薬剤や仕上がりの反応、会話の中で出た趣味や家族の話まで、カルテに残しておくと、次回の「あれからどうですか」の一言が自然に出てきます。
この積み重ねが、他のお店では味わえない、自分をわかってくれている感覚を生みます。顧客満足度は顧客体験度に比例するというのがVOCの考え方です。技術そのものより、覚えていてくれたという体験が、また来たいという気持ちをつくっていきます。
4. サロン全体で指名を増やす仕組みの作り方
これからサロン全体で指名を増やす仕組みについて解説します。個人の頑張りを、お店の再現できる強さに変えていく視点です。
- 4-1 まず社内のファンをつくる
- 4-2 行動指標で接客の質を揃える
- 4-3 一人ひとりのビジョンを描く
4-1 まず社内のファンをつくる
お客様のファンをつくる前に、まず社内のファンをつくる。これはVOCが大切にしているインナーブランディングの考え方です。スタッフが自分のお店を好きで、理念に共感していると、その空気は接客ににじみ出て、お客様にも伝わっていきます。
逆に、働く人が疲れていたり、お店に不信感を抱えていたりすると、どれだけ接客マニュアルを整えても、指名にはつながりにくくなります。指名を増やす取り組みは、実は職場の空気づくりから始まっています。
4-2 行動指標で接客の質を揃える
個人任せの接客は、質にばらつきが出ます。そこで役立つのが行動指標です。VOCでは、細かいルールで縛るのではなく、心地よいコミュニケーションを大切にしようといった、幅のある指標でお店の関わり方を揃えていきます。
この考え方は、VOCの実務ナレッジにある、10人中8人ができる標準化という発想とも重なります。一部のセンスある人だけでなく、多くのスタッフが一定の質を再現できる状態をつくる。上質な体験を特別なものではなく標準として付帯させることで、どの担当者を選んでも満足できるお店になり、結果としてお店全体の指名が底上げされていきます。
4-3 一人ひとりのビジョンを描く
指名を増やすには、スタッフ自身が前向きに接客に向き合えていることが欠かせません。VOCは、個人のビジョンが曖昧なままだと働くモチベーションが下がりやすいと考えます。どんな美容師になりたいのか、その姿を一緒に描くことが、日々の接客の質を支えます。
やりたいこと、できること、求められていること。この3つが重なる役割をスタッフと見つけていくと、接客は義務ではなく、自分の目標に向かう行動に変わります。主体的に動くスタッフが増えるほど、お客様に選ばれる場面も自然と増えていきます。
まとめ:指名は体験の積み重ねと仕組みで増やす
指名は、技術力の高さだけで決まるものではありません。お客様が「また任せたい」と感じる体験を、第一印象からアフターフォローまで丁寧に設計し、それを個人任せにせずサロン全体で再現できる仕組みに変えていくことで、安定して増やしていけます。今日から意識したいポイントをまとめます。
- 技術と同じ熱量で、警戒心を下げる関わり方を磨く
- カウンセリングで、言葉にならない願望まで一緒に見つける
- 提案は説明ではなく、思いを乗せたストーリーで伝える
- 次回予約とアフターフォローで、満足を続く関係に変える
- お客様の情報を記録し、覚えていてくれたという体験をつくる
- まず社内のファンをつくり、行動指標で接客の質をお店全体で揃える
よくある質問
Q1. 指名を増やすには、まず何から始めればいいですか?
第一印象で警戒心を下げることから始めるのがおすすめです。笑顔と目線、簡単な自己紹介でお客様の緊張をほぐすだけで、その後のカウンセリングや提案が届きやすくなります。特別な技術や道具はいらず、明日から取り組める一歩です。
Q2. 技術に自信がなくても指名は増やせますか?
増やせます。お客様の多くは仕上がりの細かな差よりも、施術中の心地よさや、自分をわかってくれる感覚を記憶しています。技術の研鑽は続けつつ、カウンセリングやアフターフォローといった関わりの部分を丁寧にすることで、指名は十分に伸ばせます。
Q3. 特定のスタッフだけ指名が多く、他が伸びません。どうすればいいですか?
指名を生む接客のポイントを言葉にして、お店の中で共有することから始めてみてください。行動指標で関わり方の基準を揃え、多くのスタッフが一定の質を再現できる状態をつくると、一部の人に頼らないお店全体の指名構造が育っていきます。


