物価高が続くなかで、お客さまが「サロンでやること」と「自宅で済ませること」を選び分けはじめています。リクルートのホットペッパービューティーアカデミーが2026年8月21日に公表した研究員コラムでは、自宅セルフケアの頻度が1年前より増えた人の割合が、ヘアでは男性18.0%・女性26.9%だったのに対し、ネイル関連は男性80.9%にのぼりました。ヘアは自宅に持っていかれにくい。ただし同じ調査には、男性のヘアサロン利用が「絶対に欠かせない」と答えた割合が8.5%で全ジャンル最低という数字も並んでいます。この記事では、その数字の読み方と、美容室が確認しておくことを整理します。
この記事を3行で解説
- 自宅セルフケアの頻度が増えた人はヘアで男性18.0%・女性26.9%と全ジャンル最低、ネイル関連は男性80.9%。
- ヘアは「現状維持」が男性80.3%・女性77.3%で突出する一方、男性ヘアの「絶対に欠かせない」は8.5%で最も低い。
- 調査は自宅ケアの広がりを「奪われる脅威」と「関心の高さ=伸びしろ」の両面で捉えるべきだと整理している。
1. データで見る:自宅セルフケアが増えたのはどのジャンルか
要点:自宅セルフケアの頻度が1年前より増えた人はヘアで男性18.0%・女性26.9%と最も低く、ネイル関連は男性80.9%で最も高い結果でした。
これから、自宅セルフケアがどのジャンルで増えたのかについて解説します。取り上げるのは次の2点です。
- 1-1 ヘアは男性18.0%・女性26.9%で最も低い
- 1-2 ネイル・アイ・エステ・リラクは男性で6〜8割が「増えた」
1-1 ヘアは男性18.0%・女性26.9%で最も低い
ヘアは、他のジャンルに比べて自宅ケアへ流れにくい領域です。1年前と比べて自宅でのセルフケアの頻度が「増えた」と答えた割合は、ヘアで男性18.0%・女性26.9%。同じ調査の他ジャンルと並べると、いずれも最も低い水準でした〔株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/研究員コラム「サロンか、自宅か?― 物価高で分かれる、伸びる美容と守る美容」/2026年8月21日公表〕。
コラムでは、男女ともヘアは自宅で代替しにくいと考えられ、それ以外のジャンルほど自宅ケアが活発になる傾向がうかがえる、と整理されています。カットやカラーは道具と技術の壁が高く、鏡の前で自分の後頭部を触るところから難しい。数字はその実感と一致しています。
ただし、この18.0%や26.9%は「自宅ケアが増えた人の割合」であって、「サロン利用が減った人の割合」ではありません。ここを混同すると読み違えます。
1-2 ネイル・アイ・エステ・リラクは男性で6〜8割が「増えた」
ヘア以外のジャンルでは、自宅ケアの伸びがはっきり出ています。男性では、セルフケアの頻度が「増えた」割合がネイル関連80.9%、アイ関連69.2%、エステ関連66.9%、リラク関連57.5%。女性でもエステ関連52.4%、リラク関連43.9%が高い水準でした〔同コラム〕。
| ジャンル | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| ネイル関連 | 80.9% | ― |
| アイ関連 | 69.2% | ― |
| エステ関連 | 66.9% | 52.4% |
| リラク関連 | 57.5% | 43.9% |
| ヘア | 18.0% | 26.9% |
※「1年前と比べて自宅セルフケアの頻度が増えた」と回答した割合。「―」は上記コラム本文に数値の記載がなかった項目です〔同コラム〕。
ヘッドスパ・まつげ・ネイル・エステを併設している美容室にとっては、ヘア以外の枠がこの流れに接していることになります。同じ店内でも、メニューによって置かれている状況が違うわけです。
2. ヘアは切られにくい。ただし男性は「こだわらない」
要点:必須度は女性でヘア57.2%が最高。一方、男性のヘアサロンで「絶対に欠かせない」は8.5%と全ジャンル最低でした。
これから、ジャンルごとの必須度について解説します。取り上げるのは次の2点です。
- 2-1 女性はヘアの必須度が57.2%で最も高い
- 2-2 男性ヘアの「絶対に欠かせない」は8.5%で全ジャンル最低
2-1 女性はヘアの必須度が57.2%で最も高い
女性にとって、ヘアサロンは最後まで残る支出です。「絶対に欠かせない」と「できるだけ通い続けたい」を合わせた必須度は、女性でヘアサロン57.2%が最も高く、アイサロン56.3%、ネイルサロン52.3%、エステサロン41.7%と続きました〔同コラム〕。
逆側も出ています。女性のエステサロンは「真っ先に諦める」が22.3%で、全ジャンルのなかで最も手放されやすいという結果でした。同じエステでも、男性利用者では必須度57.6%・「真っ先に諦める」9.3%と正反対です。
エステを併設している美容室であれば、女性客と男性客で同じ枠の意味がまったく違っている、ということになります。
2-2 男性ヘアの「絶対に欠かせない」は8.5%で全ジャンル最低
男性のヘアサロンは、支出の意向が現状維持中心である一方で、店への結びつきは弱いという結果でした。男性の必須度はアイサロン60.5%・エステサロン57.6%がヘアサロン54.5%を上回りました。さらに、男性のヘアサロン利用で「絶対に欠かせない」と答えた割合は8.5%で、調査全体のなかで最も低い数字でした〔同コラム〕。
コラムはこれを「通うが、こだわらない」という男性の姿だと表現しています。髪は切りに行くけれど、この店でなければいけない理由は薄い、という状態です。
近くに安い店ができたとき、あるいは担当者が辞めたときに、真っ先に動くのがこの層になります。来店回数の減少を止める3つの設計で触れた「忘れられない仕組み」は、男性客ほど効きしろが大きいと言えます。
3. 今後の支出意向はヘアが「現状維持」8割
要点:ヘアサロンは「現状維持」が男性80.3%・女性77.3%で突出。一方「増やそう」は全ジャンルで男性が女性を上回りました。
これから、今後の支出意向について解説します。取り上げるのは次の2点です。
- 3-1 ヘアの「現状維持」は男性80.3%・女性77.3%
- 3-2 「増やそう」は全ジャンルで男性が女性を上回る
3-1 ヘアの「現状維持」は男性80.3%・女性77.3%
ヘアサロンへの支出は、増えも減りもしない、という答えが大半でした。今後の支出意向を見ると、ヘアサロンは「現状維持」が男性80.3%・女性77.3%と突出し、「減らそう」も最少水準だったと報告されています〔同コラム〕。
守られている、と読めます。ただし現状維持ということは、同じ客数のままなら売上も横ばいということでもあります。値上げをした分、来店回数やメニュー数で調整されると、店側の実感としては減ってしまう。同じ調査を扱った別のコラムでは、ヘアサロンの値上げに「納得している」と「どちらかといえば納得している」を合わせた割合が73.3%で全ジャンル最高でした〔株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/研究員コラム「値上げの時代、通い続けてもらう条件―半数超が値上げを経験。7割超が値上げに納得する理由は?」/2026年8月19日公表/一次ソース〕。この数字は美容室の値上げへの納得度を掘り下げた記事でも扱っています。あわせて見ると、価格は通っても総量は増えにくい局面だとわかります。
3-2 「増やそう」は全ジャンルで男性が女性を上回る
伸びる方向にあるのは男性側です。「増やそう」と考える割合は、すべてのジャンルで男性が女性を上回りました。ネイルサロンは男性18.4%に対し女性7.0%、アイサロンは男性9.3%に対し女性5.1%、エステサロンは男性9.0%に対し女性5.4%です〔同コラム〕。
反対に、女性のエステサロンは「減らそう」が41.0%で全ジャンル最高でした。同じ枠を、男性は増やしたいと考え、女性は削りたいと考えている。ここまで割れているジャンルは他にありません。
4. 自宅ケアの広がりは脅威か、伸びしろか
要点:コラムは自宅ケアの活発化を「自宅への代替」と「関心の高さ」の両面で捉え、どちらか一方に決めつけないよう整理しています。
これから、この数字をどう受け止めるかについて解説します。取り上げるのは次の2点です。
- 4-1 コラムは「代替」と「関心の高さ」の両面で整理している
- 4-2 数字を読むときの留保
4-1 コラムは「代替」と「関心の高さ」の両面で整理している
自宅ケアが増えた=サロンが減った、とは限りません。コラムは、自宅ケアの活発化は「サロンの代わりに自宅で済ませる(自宅への代替)」とも読めるが、「そのジャンルへの関心が高い(サロンも自宅も利用を増やす)」とも言えると述べ、どちらか一方に決めつけず両面から捉えることが欠かせない、としています〔同コラム〕。
実際、男性はサロン支出の意向も高く、セルフケアの意向も高い。コラムはこれを男性美容全体の底上げとして読み解いています。自宅で手をかける人ほどサロンからも離れていない、という構図です。
そのうえでコラムは、ネイルサロンとアイサロンについて必須度・支出意向・消費の伸びの三つがそろって良好で、物価高局面における数少ない成長の芽になる可能性が高いと指摘しています。ただしアイ・ネイルは自宅ケアの伸びも大きく、この需要を自宅で完結させずサロンへ取り込めるかが分かれ目になる、とも書かれています。
4-2 数字を読むときの留保
数字を自店に当てはめる前に、押さえておきたい前提が3つあります。
- 調査対象は全国男女20〜49歳のうち、1年以内のヘアサロン利用者、またはリラク・エステ・アイ(まつげ)・ネイルのいずれかのサロン利用者で、有効回答は3,095人です〔株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容サロン利用における物価高の影響調査」/2026年7月31日公表/実施2026年6月5日〜6月8日〕。50代以上や、サロンを1年以上使っていない層は含まれていません。
- セルフケアの「増えた」割合は自宅ケアの頻度についての回答であり、サロン利用が減ったことを直接示す数値ではありません。
- 必須度や支出意向は、いま現にそのジャンルを利用している人のなかでの回答です。男性エステの必須度57.6%は、男性一般ではなく男性利用者の数字だという点に注意が必要です。
そのうえで、自店の予約データで「ヘア以外の枠の予約間隔が延びていないか」を見るのが、いちばん確実な確認になります。
5. 美容室が今のうちに確認しておくこと
要点:ヘア以外の併設メニューは自宅ケアと競合しやすく、男性客は支出を増やす意向がある一方で店への結びつきが弱い、という2点の確認が要ります。
これから、確認しておくことについて解説します。取り上げるのは次の2点です。
- 5-1 併設メニューは「自宅で完結」させない設計になっているか
- 5-2 男性客は「増やす意向」があるのに結びつきが弱い
5-1 併設メニューは「自宅で完結」させない設計になっているか
ヘッドスパ・まつげ・ネイル・エステの枠は、ヘアとは別の力学で動いています。自宅セルフケアの伸びが大きいジャンルほど、道具や商品が家庭に入りやすい領域です。コラムがこの点に触れているのはアイサロンとネイルサロンについてで、伸びる需要が自宅とサロンの両方に向かっており、自宅で完結させないことが成長の条件だとしています〔同コラム〕。ヘッドスパやエステについて同じ整理がされているわけではないので、そのまま当てはめないほうが安全です。
店側でできる確認は地味です。併設メニューの再来間隔がこの1年で延びていないか。ホームケアの提案が、サロンに戻る理由とセットになっているか。自宅ケアを止める方向ではなく、自宅ケアをしている人ほど来たくなる設計になっているか。数字を見ながらこの3つを点検するのが先で、割引の検討はその後です。
5-2 男性客は「増やす意向」があるのに結びつきが弱い
男性は、すべてのジャンルで支出を増やす意向が女性を上回りました。にもかかわらず、男性のヘアサロン利用で「絶対に欠かせない」は8.5%と全体最低です。増やす気はあるのに、いまの店には縛られていない、という状態と読めます。
ここは、既存の男性客に何をしているかで差が出るところです。カットだけで完結させず、髪や頭皮の状態について次に来る理由を渡せているか。担当者以外にも顔を覚えている人がいるか。予約の入り口が面倒になっていないか。男性のメニュー単価を上げる前に、まず結びつきの弱さを埋めるほうが順番として近道です。
業界全体の動きとあわせて確認したい場合は、美容室経営に効く業界動向2026のまとめにコスト・制度・集客の最新分を整理しています。
まとめ
要点:ヘアは自宅に代替されにくく支出も現状維持が中心ですが、男性の結びつきの弱さと、ヘア以外の枠の自宅ケア化が課題として残ります。
リクルートのホットペッパービューティーアカデミーが2026年8月21日に公表した研究員コラムでは、自宅セルフケアの頻度が増えた人の割合がヘアで男性18.0%・女性26.9%と最も低く、ネイル関連は男性80.9%にのぼりました。今後の支出意向もヘアは「現状維持」が男性80.3%・女性77.3%と突出しています。一方、男性のヘアサロンで「絶対に欠かせない」は8.5%と全ジャンル最低で、通うが店にはこだわらない層の存在が示されました。コラムは自宅ケアの広がりを脅威とも伸びしろとも読めるとし、伸びる需要を自宅で完結させないことが分かれ目だと整理しています。
重要なポイント
- 自宅セルフケアが「増えた」のはヘアで男性18.0%・女性26.9%、ネイル関連は男性80.9%。ヘアは自宅に代替されにくい。
- 必須度は女性でヘア57.2%が最高。男性はアイ60.5%・エステ57.6%がヘア54.5%を上回った。
- 男性ヘアの「絶対に欠かせない」は8.5%で全ジャンル最低。通うが、こだわらない。
- 「増やそう」は全ジャンルで男性が女性を上回り、女性のエステは「減らそう」41.0%で最高。
- 自宅ケアの増加はサロン利用の減少を直接示す数値ではない。両面で読む。
よくある質問
Q1. 自宅ケアが増えているなら、美容室の客数はこれから減るのでしょうか。
A. 今回のコラムの数値からは、そう断定はできません。自宅セルフケアの「増えた」割合は自宅での頻度についての回答で、サロン利用が減ったことを示すものではないためです。コラム自体も、自宅への代替とも、そのジャンルへの関心の高さとも読めるとして、両面から捉えるよう整理しています〔同コラム〕。
Q2. ヘア以外のメニューを併設していますが、続けるべきでしょうか。
A. 一般論として判断できる材料ではありません。コラムはネイルサロン・アイサロンについて必須度・支出意向・消費の伸びの三つが良好で成長の芽になり得るとする一方、自宅ケアの伸びも大きく、需要を自宅で完結させずサロンへ取り込めるかが分かれ目だとしています。自店の再来間隔や指名率を確認したうえで判断するのが順当です。
Q3. 男性客を増やすべき、という結論になりますか。
A. 「増やそう」という支出意向が全ジャンルで男性が女性を上回ったのは事実です。ただし男性のヘアサロン利用で「絶対に欠かせない」は8.5%と全ジャンル最低でもあります。新規で集めることより、いま来ている男性客との結びつきを確かめるほうが先に効く可能性があります。
出典
- 株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/研究員コラム「サロンか、自宅か?― 物価高で分かれる、伸びる美容と守る美容」(研究員 田中公子)/2026年8月21日公表 https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/column/c_hair/81756/
- 株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/「美容サロン利用における物価高の影響調査」/2026年7月31日公表(調査手法:インターネットリサーチ/調査対象:全国男女20〜49歳のうち1年以内のヘアサロン利用者、またはリラク・エステ・アイ(まつげ)・ネイルのいずれかのサロン利用者/有効回答3,095人/実施期間2026年6月5日〜6月8日) https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/trade/salon/s_consumption/81380/
- 株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/研究員コラム「値上げの時代、通い続けてもらう条件―半数超が値上げを経験。7割超が値上げに納得する理由は?」/2026年8月19日公表 https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/column/c_hair/81619/2/
免責:本記事は2026年8月27日時点で公表されている一次資料にもとづく情報提供であり、経営判断・投資判断を保証するものではありません。調査数値は上記の調査対象・調査時点における回答結果であり、個々のサロンの状況を示すものではありません。個別の経営・労務・税務の判断は、社会保険労務士・税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴
2026年8月27日:初版公開。


