同じ美容室のメニューなのに、カットは伸びてパーマだけが落ちている。そんな動きが、公的統計をもとにした業界データではっきり出てきました。ホットペッパービューティーアカデミー『数字で見る美容業界』の「毎月の美容消費」(サイト上に「9/1 更新」と表示、2026年9月2日閲覧)では、2026年6月の「パーマネント代」が前年同月比-9.4%。一方で「カット代」は同+4.4%と伸びています。値上げが進んでいるのに、なぜパーマだけ違う方向に動くのか。この記事では、その数字が何を意味していて、自分の店のメニューをどう見直せばいいのかを、順番に整理していきます。
この記事を3行で解説
- 2026年6月の「理美容サービス計」の支出は3,693円で前年同月比+3.9%、うちカット代は644円(+4.4%)と伸びた一方、パーマネント代は174円(-9.4%)と減った。
- これは1世帯あたりの月平均支出であって、サロンの客単価そのものではない。ここを混同すると判断を誤る。
- 値上げ局面ではお客様がメニューを取捨選択する。パーマを「残すか・畳むか・組み替えるか」を数字で決める時期にきている。
1. 2026年6月、美容室まわりの支出はどう動いたのか
要点:2026年6月の理美容サービス計は3,693円(前年同月比+3.9%)。カット代644円(+4.4%)は伸び、パーマネント代174円(-9.4%)は減りました。
これから2026年6月の理美容関連支出の実数について解説します。取り上げるのは次の3点です。
- 1-1 理美容サービス全体は前年を上回った
- 1-2 内訳ではカットとパーマが逆方向に動いた
- 1-3 理美容用品(店販に近い領域)はほぼ横ばい
1-1 理美容サービス全体は前年を上回った
2026年6月の「理美容サービス計」の支出は3,693円で、前年同月と比べて140円、率にして+3.9%増えています。前月比では44円のマイナスですが、前年比で見れば明確なプラスです。〔機関:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/資料名:数字で見る美容業界「毎月の美容消費」2026年6月分(サイト表示「9/1 更新」・2026年9月2日閲覧)/出典元データ:総務省「家計調査」の品目分類をもとにホットペッパービューティーアカデミー作成、ふたり以上世帯の月別消費〕(数字で見る美容業界)
全体が伸びているという事実は、まず押さえておきたいところです。「美容にお金が回らなくなっている」という漠然とした不安とは、少なくとも6月時点の数字は一致していません。
1-2 内訳ではカットとパーマが逆方向に動いた
問題は内訳です。同じ理美容サービスの中で、カット代とパーマネント代がはっきり違う方向を向いています。
| 項目(2026年6月) | 金額 | 前月比 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|
| 理美容サービス 計 | 3,693円 | -44円 | +140円(+3.9%) |
| カット代 | 644円 | +69円 | +27円(+4.4%) |
| パーマネント代 | 174円 | -40円 | -18円(-9.4%) |
〔機関:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/資料名:数字で見る美容業界「毎月の美容消費」2026年6月分(2026年9月2日閲覧)/原データ:総務省「家計調査」品目分類・ふたり以上世帯の月別消費〕
カット代は前月比・前年比ともにプラス。対してパーマネント代は前月比・前年比ともにマイナスで、前年比の下げ幅は約1割です。ホットペッパービューティーアカデミーは同ページで、過去1年の推移を見ても理美容サービス全体やカット代は前年超えの月が目立つ、と説明しています。
1-3 理美容用品(店販に近い領域)はほぼ横ばい
同じ更新で公表されている「理美容用品 計」は5,191円、前年同月比-16円(-0.3%)でした。〔機関:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/資料名:数字で見る美容業界「理美容用品」2026年6月分(2026年9月2日閲覧)〕
ただし、用品が落ち込んでいるという話ではありません。同じPOINT欄で調査元は、過去1年を通して理美容用品全体はプラス傾向の月が多く、これには物価高(各社商品の価格改定)の影響も含まれていると推察される、と述べています。6月単月ではほぼ横ばいだった、という読み方が正確です。自宅ケアとサロンの関係については、物価高のなかで自宅ケアとサロン利用がどう分かれているかをまとめた記事でも扱っています。
2. なぜパーマだけが減っているのか
要点:支出増は物価高に伴う価格改定の影響が大きく、値上がりのなかでお客様がメニューを取捨選択している、というのが調査元の見立てです。
これから減少の背景として押さえるべき点を解説します。取り上げるのは次の2点です。
- 2-1 調査元が示している見立て
- 2-2 物価の水準と重ねて読む
2-1 調査元が示している見立て
ホットペッパービューティーアカデミーは同ページのPOINT欄で、この支出増は昨今の物価高に伴うサービス価格の改定が大きく影響していると推察される、と述べています。そのうえで、パーマネント代のマイナス傾向からは、価格上昇の中で消費者がメニューを取捨選択している様子がうかがえる、としています。〔機関:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/資料名:数字で見る美容業界「毎月の美容消費」2026年6月分 POINT欄(2026年9月2日閲覧)〕
つまり「全体が伸びた=みんなが美容にお金を使うようになった」ではなく、「価格が上がった結果として金額が伸び、そのなかで削られたメニューがある」という読み方です。削られた側にパーマが入っている、というのが6月時点の数字が示していることになります。
2-2 物価の水準と重ねて読む
物価そのものの動きも確認しておきます。総務省が公表した2025年基準の消費者物価指数によると、2026年7月分の総合指数は102.0で、前年同月比+1.9%の上昇でした。〔機関:総務省統計局/資料名:2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)7月分/公表日:2026-08-21〕(消費者物価指数(CPI)結果)
物価が上がっている局面である、という前提はこの数字からも確認できます。ただし、こちらは2026年7月分、理美容の支出は2026年6月分と対象月が違うため、両者を直接引き算して「物価上昇分を上回った」と読むことはできません。押さえておきたいのは、物価が上がる局面で理美容サービス全体の支出額も増えているのに、そのなかでパーマだけが1割近く落ちている、という構図のほうです。単純な節約というより、限られた予算の中での優先順位の付け替えが起きていると考えるほうが自然です。値上げを受け入れてもらえるかどうかについては、値上げへの納得度を調査した別記事も参考になります。
3. この数字を読み違えないための3つの注意点
要点:これは1世帯あたりの月平均支出であり、サロンの客単価でも、パーマの施術単価でもありません。
これから数字の扱い方について解説します。取り上げるのは次の3点です。
- 3-1 客単価と混同しない
- 3-2 利用していない世帯も母数に入っている
- 3-3 単月の動きだけで結論を出さない
3-1 客単価と混同しない
この数値は総務省「家計調査」の品目分類をもとに、ふたり以上世帯の月別消費として作成されたものです。「パーマネント代174円」は、パーマ1回の料金が174円という意味ではありません。世帯単位で1か月あたりにならしたときの平均額です。
自店のパーマ単価やパーマ比率と直接比べても意味がありません。比べるべきは「自店のパーマ売上構成比が、去年の同じ月と比べて増えたか減ったか」という同じ土俵の変化率です。
3-2 利用していない世帯も母数に入っている
同じ資料には、値は各世帯ごとの平均であり、利用者ではない人も母数に含む、と明記されています。〔機関:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー/資料名:数字で見る美容業界「毎月の美容消費」注記(2026年9月2日閲覧)〕
そのため、この-9.4%には「パーマをかける人の単価が下がった」ケースと「パーマをかける人そのものが減った」ケースの両方が混ざっています。どちらが自店で起きているかは、自店のデータでしか分かりません。
3-3 単月の動きだけで結論を出さない
今回取り上げているのは2026年6月という単月の数字です。前月比では理美容サービス計も-44円とマイナスになっており、月ごとの振れは小さくありません。「1か月分の統計を見てパーマメニューを廃止する」といった判断は、材料として弱すぎます。
使い方としては、自店の直近12か月のメニュー別売上を並べて、同じ方向に動いているかどうかを確認する、という程度が適切です。
4. パーマを「残す・畳む・組み替える」で決める手順
要点:自店の数字を出し、粗利と稼働時間で評価し、そのうえで残す・畳む・組み替えるのどれかに決める、という順番で進めます。
これから実務の進め方について解説します。取り上げるのは次の3点です。
- 4-1 まず自店のパーマ構成比を出す
- 4-2 売上ではなく時間あたり粗利で見る
- 4-3 3つの選択肢から決める
4-1 まず自店のパーマ構成比を出す
最初にやることは、統計を読むことではなく自店の数字を出すことです。直近12か月について、月ごとのパーマ売上・パーマ客数・全体売上を並べます。POSやサロンシステムから出せるはずの、いちばん基本的なデータです。
ここで前年同月と比べて構成比が落ちていなければ、業界全体が落ちていても自店では起きていないということになります。逆に落ちていれば、次のステップに進みます。
4-2 売上ではなく時間あたり粗利で見る
パーマは薬剤原価がかかり、施術時間も長くなりがちです。売上金額だけで見ると「パーマは単価が高いから残すべき」という結論になりやすいのですが、セット面が長時間ふさがることまで含めて評価しないと判断を誤ります。
見るのは、1回あたりの粗利(売上-薬剤等の原価)を、その施術にかかる占有時間で割った数字です。カット+カラーの組み合わせと比べたとき、パーマがどの位置にあるのかがはっきりします。メニュー全体の設計の考え方は、客単価を押し売りせずに伸ばす仕組みを整理した記事にまとめています。
4-3 3つの選択肢から決める
数字が出たら、選択肢は次の3つに絞られます。
| 判断 | 向いている状況 | やること |
|---|---|---|
| 残す | 時間あたり粗利が他メニューと同等以上/指名客に固定需要がある | 価格と所要時間を見直したうえで継続。指名客への次回提案を仕組み化する |
| 畳む | 構成比が数年下がり続け、時間あたり粗利も低い | メニュー表から外し、その時間をカラーやトリートメントの枠に振り替える |
| 組み替える | 需要はあるが単発では採算が合わない | カットやトリートメントとのセットとして再設計し、所要時間と価格を組み直す |
どれが正解かは店によって違います。共通しているのは、業界統計を見て不安になることと、自店のメニューを決めることは別の作業だ、という点です。統計は「確認すべき論点」を教えてくれますが、答えは自店のデータの中にしかありません。
制度やコストを含めた業界全体の動きは、美容室経営に効く業界動向2026のまとめ記事で通しで確認できます。
5. まとめと重要ポイント
2026年6月の理美容サービス計の支出は3,693円で前年同月比+3.9%と伸びましたが、内訳ではカット代644円(+4.4%)が伸びる一方、パーマネント代174円(-9.4%)が減りました。調査元は、支出増は物価高に伴う価格改定の影響が大きく、パーマの減少からは消費者がメニューを取捨選択している様子がうかがえると説明しています。ただしこれは1世帯あたりの月平均支出で、サロンの客単価ではありません。実務では自店のパーマ構成比を直近12か月で出し、売上ではなく時間あたり粗利で評価したうえで、残す・畳む・組み替えるのいずれかを決めるのが順序です。
- 2026年6月:理美容サービス計3,693円(前年同月比+3.9%)/カット代644円(+4.4%)/パーマネント代174円(-9.4%)
- 理美容用品計は5,191円(-0.3%)でほぼ横ばい。サービス支出だけが伸びている
- 数値は家計調査ベースの世帯平均支出であり、施術単価でも客単価でもない
- -9.4%には「単価が下がった」と「かける人が減った」の両方が混ざっている
- 判断は自店の時間あたり粗利で行い、残す・畳む・組み替えるの3択に落とす
6. よくある質問
Q1. パーマネント代174円という数字は、パーマの施術料金が174円ということですか。
違います。総務省「家計調査」の品目分類をもとにした、ふたり以上世帯の1か月あたり平均支出額です。パーマを利用していない世帯も母数に含まれているため、施術1回の料金とはまったく別の数字です。
Q2. パーマの-9.4%は、パーマメニューをやめる根拠になりますか。
単月の統計だけでは根拠として弱いです。まず自店の直近12か月のパーマ売上・客数・構成比を出し、時間あたり粗利で評価してから判断してください。業界全体で落ちていても、自店では落ちていないケースがあります。
Q3. カット代が+4.4%なのは、来店回数が増えたからですか。
今回のデータからは分かりません。ホットペッパービューティーアカデミーは、支出増について物価高に伴うサービス価格の改定の影響が大きいと推察されると説明しています。回数が増えたのか、1回あたりの価格が上がったのかを分けて示したデータではないため、断定はできません。
出典
- 株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「数字で見る美容業界」/該当データ:毎月の美容消費 2026年6月分(サイト上に「9/1 更新」と表示・2026年9月2日閲覧)
https://hba.beauty.hotpepper.jp/search_sp/(原データ:総務省「家計調査」の品目分類をもとに同アカデミー作成、ふたり以上世帯の月別消費) - 総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)7月分」/公表日:2026-08-21
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
【ご注意】本記事は2026年9月2日時点で公表されている統計・調査をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。統計値は各機関の公表内容に基づいており、記事内の解釈は自店の状況に必ずしも当てはまるとは限りません。価格改定・メニュー改定にあたっては、自店の実データをご確認のうえ判断してください。税務・労務に関わる論点が生じる場合は、税理士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年9月2日 初版公開


