売上はそこそこあるのに、月末になるとお金が残っていない。そんな時に見直したいのが経費の中身です。美容室の経費は種類が多く、どれが多すぎてどれが適正なのか、比べる物差しがないと判断できません。この記事では、美容室の経費の全体像と、変動費の代表である材料費率の考え方、無理のない経費見直しの手順を整理します。なお本記事は一般的な解説で、比率の目安はお店の業態により変わります。自店の数値判断や税務は税理士など専門家にご相談ください。
この記事を3行で解説
- 美容室の経費は人件費・家賃・材料費が三本柱で、まず内訳の見える化から始める
- 材料費率は売上の10%前後が一つの目安とされ、超えていれば改善余地がある
- 経費削減はお客様の体験を落とさない項目から。人件費と教育費は最後に守る
1. 美容室の経費の全体像
これから美容室の経費の全体像について解説します。まず地図を持ちましょう。
- 1-1 経費の三本柱は人件費・家賃・材料費
- 1-2 まず3か月分の内訳を見える化する
1-1 経費の三本柱は人件費・家賃・材料費
美容室の経費で大きな割合を占めるのは、人件費、家賃、材料費の3つです。
技術職の集まる労働集約型のビジネスのため人件費が最も大きく、立地商売ゆえの家賃、施術のたびに使う材料費が続く構造だからです。ほかに水道光熱費、広告宣伝費、消耗品費、リース料などが並びます。
比率はお店の業態で大きく変わりますが、一般に人件費は売上の40〜50%前後、家賃は10%前後が目安といわれることが多いようです。大事なのは他店との比較より、自店の比率が毎月どう動いているかを把握することです。
1-2 まず3か月分の内訳を見える化する
経費の見直しは、削る前に見えるようにすることから始まります。
どの項目にいくら使っているかが分からないままでは、削るべき場所も削ってはいけない場所も判断できないからです。
直近3か月の経費を項目ごとに書き出し、それぞれを売上で割って比率を出してみてください。会計ソフトを使っていれば数分で出せる作業です。並べてみると、思ったより広告費が大きい、サブスクが積み上がっている、といった気づきが必ず出てきます。この一覧が、次の改善の出発点になります。
2. 材料費率の考え方
これから材料費率について解説します。変動費の代表であり、コントロールしやすい項目です。
- 2-1 売上の10%前後が一つの目安
- 2-2 率が高い時に疑うポイント
2-1 売上の10%前後が一つの目安
美容室の材料費率は、売上の10%前後が一つの目安とされています。
カラー剤やパーマ液、シャンプーなどの仕入れは売上に連動して増減する変動費で、多くのお店の実績値がこの水準に収まっているといわれるからです。カラーやトリートメントの比率が高いお店では15%程度まで上がることもあります。
自店の材料費率は、月の材料仕入れ額÷月の売上高で出せます。まず直近3か月の平均を出し、目安と比べてみてください。目安より大きく高いなら改善の余地あり、極端に低いなら在庫の計上時期のずれや品質面の無理がないかも見ておきたいところです。
2-2 率が高い時に疑うポイント
材料費率が高い時は、単価の高い仕入れよりも、使い方と在庫にムダが潜んでいることが多いものです。
薬剤の出しすぎや廃棄、使いかけの重複在庫、発注のしすぎによる劣化などは、日々の運用で静かに積み上がるコストだからです。
カラー剤の計量を習慣にする、在庫の棚卸しを月1回行う、発注は在庫表を見てから行う。この3つだけでも変わります。さらに複数のディーラーから見積もりを取り、価格と品質・納期を比較するのも有効です。ただし、仕上がりに直結する薬剤の質を落とす削減は、客離れという大きな損失につながりかねないので慎重に。
3. 経費見直しの手順と優先順位
これから経費見直しの手順について解説します。削る順番が結果を左右します。
- 3-1 お客様に見えない固定費から削る
- 3-2 人件費と教育費は最後まで守る
3-1 お客様に見えない固定費から削る
経費削減は、お客様の体験に影響しない項目から手をつけるのが鉄則です。
体験に関わる部分を削ると、単価や再来率の低下という形で売上側に跳ね返り、削減額以上の損失になりうるからです。
見直しやすいのは、効果を測っていない広告費、使っていないサブスクやリース、過剰な雑誌・備品、電力会社やプランの見直しなど。特に広告費は、媒体ごとの新規数と費用を並べて費用対効果を出すと、思い切った整理がしやすくなります。浮いたお金を教育や設備に回せば、削減が投資に変わります。
3-2 人件費と教育費は最後まで守る
人件費と教育費は、経費というより未来への投資として扱いたい項目です。
美容室の商品はスタッフの技術と接客そのものであり、ここを削るとサービスの質、スタッフの定着、採用力のすべてが痛むからです。
人件費率が高いと感じる時も、給与カットではなく、売上側を伸ばす発想を先に。生産性の指標としてスタッフ1人あたり売上を毎月見て、教育やメニュー設計で1人あたりの生み出す価値を上げていく。こちらの順番のほうが、結果として健全な人件費率に近づきます。判断に迷う時は、数字の設計ごと税理士や専門家に相談してみてください。
まとめ:経費は削るより設計する
美容室の経費は人件費・家賃・材料費が三本柱。まず直近3か月の内訳と比率を見える化することが出発点です。材料費率は売上の10%前後が一つの目安で、高い場合は使い方と在庫のムダから疑うこと。削減はお客様に見えない固定費からで、人件費と教育費は未来への投資として最後まで守る。この優先順位を持てば、経費見直しはお店を痩せさせるのではなく、強くする作業になります。自店の数値の精査や税務の判断は、税理士など専門家と進めてください。
よくある質問(Q&A)
Q1. 材料費率は毎月どうやって管理すればいいですか?
A. 月の材料仕入れ額を売上高で割るだけでも傾向はつかめます。会計ソフトの科目別集計を使えば自動で出せるので、毎月同じタイミングで記録し、3か月移動平均で見ると季節変動に惑わされにくくなります。
Q2. 広告費はどのくらいが適正ですか?
A. 一律の正解はなく、新規1人を獲得するのにかかった費用と、その新規が生む売上(再来を含む)の釣り合いで判断するのが実務的です。媒体ごとに新規数と費用を記録し、割に合わない媒体から整理していくのがおすすめです。
Q3. 節約のために安い薬剤に切り替えても大丈夫でしょうか?
A. 仕上がりや髪への負担に影響しない範囲なら選択肢になりますが、品質が落ちるとお客様の満足度と再来率に跳ね返ります。まずは廃棄や出しすぎといった使い方のムダを削るのが先で、切り替える場合は一部メニューでのテストから始めると安全です。
