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業務委託美容師の振込手数料|2026年は合意があっても差し引き不可

業務委託美容師の振込手数料|2026年は合意があっても差し引き不可

業務委託の美容師さんに報酬を振り込むとき、振込手数料はどちらが負担していますか。契約書に「振込手数料はスタイリスト負担」と書いてあって、本人も納得している。それなら問題ない、と思っていたサロンは確認が必要です。2026年8月26日、公正取引委員会が振込手数料の差し引きを理由にフリーランス法違反の勧告を出しました〔公正取引委員会/(令和8年8月26日)株式会社ジェイトップに対する勧告について/2026年8月26日〕。しかも2026年1月1日以降になされた業務委託(1か月以上行うものに限る)については、合意の有無にかかわらず差し引きが報酬の減額に当たる扱いに変わっています。この記事では勧告文と条文にあたって、業務委託美容師と契約するサロンが何を確認すべきかを整理します。

この記事を3行で解説

  • 2026年8月26日、公正取引委員会がフリーランス法違反で勧告。報酬から実費を超える振込手数料を差し引いていた事案です。
  • 2026年1月1日以降になされた1か月以上の業務委託は、本人と合意していても振込手数料の差し引きが報酬の減額に該当します。
  • 対象は従業員を1人でも使用しているサロン。振込の実物・契約書の文言・支払明細の3点を見れば、当面の確認は終わります。

1. 2026年8月26日、公正取引委員会が振込手数料の差し引きで勧告

要点:公正取引委員会は2026年8月26日、報酬から実費を超える振込手数料を差し引いていた事業者に、フリーランス法違反の勧告を出しました。

これから今回の勧告の中身について解説します。この章では次の3点を扱います。

  • 1-1 何が違反とされたのか
  • 1-2 美容室と無関係な業種の話ではない理由
  • 1-3 勧告のあとに何が起きるのか

1-1 何が違反とされたのか

公正取引委員会は2026年8月26日、株式会社ジェイトップ(名古屋市中村区/家庭用電気製品の運送、設置工事、クリーニング等)に対し、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)第8条第4項にもとづく勧告を行いました〔公正取引委員会/(令和8年8月26日)株式会社ジェイトップに対する勧告について/2026年8月26日/公正取引委員会の勧告 公表資料〕。

違反とされたのは第5条第1項第2号、報酬の減額の禁止です。公表資料によると、同社は報酬を特定受託事業者138名の金融機関口座に振り込む際の手数料を当該事業者の負担とすることを書面又は電磁的方法で合意していましたが、令和6年11月1日から令和7年11月30日までの間に、実際に金融機関へ支払う振込手数料を超える額である計481,031円を報酬から差し引いていました〔前掲・公正取引委員会 勧告〕。同社は令和8年8月5日までに、減じた額を支払っています〔同〕。

この事案で問題になったのは、合意していたことではなく、実費を超えて引いていたことです。138名から13か月で48万円あまり。単純に頭数と月数で割ると1人あたり月260〜270円前後で、1件ずつ見れば小さな金額です。金額の大きさではなく、仕組みとして引き続けていたことが勧告につながっています。

1-2 美容室と無関係な業種の話ではない理由

勧告を受けたのは家電の運送・設置工事の会社で、美容業ではありません。それでもサロンが読む理由は、この法律が業種でも資本金でも線を引いていないからです。

法律は、特定受託事業者に業務委託をする事業者を「業務委託事業者」と定義し〔特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第2条第5項/e-Gov法令検索〕、そのうち個人であって従業員を使用するもの、または法人であって二以上の役員があり、又は従業員を使用するものを「特定業務委託事業者」としています〔同法第2条第6項〕。基準は従業員を使っているかどうかです。個人事業のサロンでも、スタッフを1人雇っていれば入ります。

業務委託と雇用のどちらで人を入れるかを迷っている段階のサロンは、美容室の業務委託と雇用の違い|選ぶ前に知る基本で契約形態そのものの違いを先に押さえておくと、この記事の話が自店にかかるかどうかを判断しやすくなります。

1-3 勧告のあとに何が起きるのか

勧告に従わなかった場合の流れも条文に書かれています。公正取引委員会は、勧告を受けた者が正当な理由がなく当該勧告に係る措置をとらなかったときは、その措置をとるべきことを命ずることができ、命令をした場合にはその旨を公表することができます〔同法第9条〕。命令に違反した場合は50万円以下の罰金です〔同法第24条第1号〕。つまり、勧告そのものに罰則があるのではなく、勧告を無視した先に命令と公表と罰金が置かれている構造です。

勧告に至る前の接触は、すでに広く起きています。公正取引委員会は令和6年度に、問題事例の多い業種に係る発注事業者3万名を対象に「フリーランスとの取引に関する調査」を実施し、令和7年10月までの間に、同法第22条にもとづき128名の事業者に対して是正を求める指導を行いました〔公正取引委員会/(令和7年12月10日)特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律に基づく指導等について/2025年12月10日/公正取引委員会の指導等 公表資料〕。この時点で集中的に調査されたのは放送業と広告業ですが、公正取引委員会は今後も違反の疑いがある事業者やその業種について積極的に情報収集を行うとしています〔同〕。

2. 対象になるサロン、ならないサロン

要点:従業員を1人でも使用しているサロンが業務委託美容師と契約すると対象になります。規模の下限はありません。

これから対象範囲について解説します。この章では次の3点を扱います。

  • 2-1 サロン側が「特定業務委託事業者」になる条件
  • 2-2 相手側が「特定受託事業者」になる条件
  • 2-3 面貸し(ミラーレンタル)はどう考えるか

2-1 サロン側が「特定業務委託事業者」になる条件

法律は発注する側を2段階で呼び分けています。特定受託事業者に業務委託をする事業者が「業務委託事業者」、そのうち個人であって従業員を使用するもの、または法人であって二以上の役員があり、又は従業員を使用するものが「特定業務委託事業者」です〔同法第2条第5項・第6項〕。

サロンに置き換えると、こうなります。スタッフを1人でも雇っている個人サロンは特定業務委託事業者。役員が2人以上いる法人サロンは、雇用スタッフがいなくても特定業務委託事業者。オーナー1人だけで雇用スタッフも他の役員もいないサロンは、特定業務委託事業者には当たりません。

ただし最後のケースでも無関係にはなりません。取引条件の明示義務を定めた第3条は「業務委託事業者」にかかる規定で、従業員の有無を問わないからです〔同法第3条第1項〕。振込手数料や支払期日の規定(第4条・第5条)が「特定業務委託事業者」向けなのに対し、明示だけは全員にかかる、という構造の違いがあります。

2-2 相手側が「特定受託事業者」になる条件

受け取る側は「特定受託事業者」です。個人であって従業員を使用しないもの、または法人であって一の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しないものが該当します〔同法第2条第1項〕。

業務委託契約で入っている美容師さん、面貸しで来ているフリーランスの美容師さん、アシスタントを雇っていない一人法人の美容師さん。多くはここに当たります。逆に、相手が自分でスタッフを雇っている場合は特定受託事業者ではありません。契約書の肩書きではなく、相手が人を使っているかどうかで決まります。

2-3 面貸し(ミラーレンタル)はどう考えるか

面貸しは契約の形がサロンによって違うので、一律には言えません。見るべきは、お金がどちら向きに流れているかです。

サロンが客を受けてその施術を美容師に回し、売上の一定割合を報酬として支払っているなら、事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること〔同法第2条第3項第2号〕に当たります。この場合は業務委託で、報酬の支払いがある以上、振込手数料の話も出てきます。一方、美容師が自分の客を自分で集めて、サロンには席の使用料だけを払っているなら、サロンから美容師への報酬の支払いがそもそもありません。

実際には、集客はサロン、指名客は美容師、という混在型が多くあります。混在しているなら、報酬を支払っている部分については対象になると考えて設計しておくのが安全です。面貸し・業務委託まわりの実務は消費税の扱いでも論点があるので、インボイス2割特例終了2026|美容室の面貸し・業務委託と消費税もあわせて確認しておくと、契約の見直しを一度で済ませられます。

3. 2026年1月から変わった|合意があっても差し引きは報酬減額

要点:2026年1月1日以降になされた1か月以上の業務委託は、合意の有無にかかわらず振込手数料の差し引きが報酬の減額に当たります。

これから2026年1月の変更点について解説します。この章では次の3点を扱います。

  • 3-1 変わったのは法律ではなく「考え方」
  • 3-2 「1か月以上」の業務委託が対象
  • 3-3 契約書に書いてあっても関係ない、の意味

3-1 変わったのは法律ではなく「考え方」

今回の勧告文には、注として次の内容が書かれています。令和7年10月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」(令和6年5月31日 公正取引委員会・厚生労働省)が改正されたことにより、令和8年1月1日以降になされた業務委託(1か月以上行うものに限る。)については、特定受託事業者との合意の有無にかかわらず、振込手数料を報酬の額から差し引くことは報酬の減額に該当することとなった〔前掲・公正取引委員会 勧告(令和8年8月26日)〕。

条文そのものは変わっていません。第5条第1項第2号は、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずることを禁じています〔同法第5条第1項第2号〕。変わったのは、この条文を当てはめるときの基準のほうです。合意があり実費の範囲内なら通っていた運用が、2026年1月1日以降になされた業務委託については通らなくなりました。

法律の条文を追いかけていても気づけない種類の変更です。改正法の施行日ではなく、運用文書の改正日で線が引かれているため、ニュースとしても流れにくい。今回の勧告が注目される理由はそこにあります。

3-2 「1か月以上」の業務委託が対象

この禁止が働く範囲は限定されています。第5条は、政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る、と区切っています〔同法第5条第1項〕。勧告文の注は、この範囲を1か月以上行うものに限ると書いています〔前掲・公正取引委員会 勧告〕。

実務で効くのは括弧の中です。1回ごとの短い契約でも、更新して1か月以上続くことになれば含まれます。業務委託美容師との契約は月単位・年単位で続くのが普通なので、多くのサロンはこの範囲に入ると考えておくほうが安全です。

逆に、他店から1日だけヘルプに来てもらうような単発の委託は、第5条の対象からは外れます。ただし次章のとおり、取引条件の明示(第3条)には期間の限定がありません。

3-3 契約書に書いてあっても関係ない、の意味

ここが一番つまずきやすい部分です。契約書に「振込手数料は受託者負担」と明記し、署名ももらっている。それでも2026年1月1日以降になされた業務委託については、合意の有無にかかわらず報酬の減額に該当することとなった、と勧告文が書いています〔前掲・公正取引委員会 勧告〕。合意は免罪符になりません。

対処の選択肢は2つです。振込手数料を引かずに満額を振り込むか、手数料相当分を織り込んだ報酬額をあらためて設定し直すか。ただし後者は報酬の額そのものの変更なので、相手の同意を取り、第3条の明示をやり直す必要があります〔同法第3条第1項〕。同意なく一方的に報酬を下げれば、それ自体が別の論点になります。

1件あたり数百円の話です。10名に毎月振り込むなら年間では数万円規模になります。勧告や指導のきっかけを残す理由としては、割に合わない金額です。

4. 振込手数料以外にサロンが守る2つの義務と第5条の禁止行為

要点:取引条件の明示(第3条)と60日以内の支払い(第4条)が義務。第5条の禁止行為のうち、役務の提供の委託に当たるサロンに効くのは3つです。

これから振込手数料以外の規定について解説します。この章では次の3点を扱います。

  • 4-1 取引条件の明示(3条通知)
  • 4-2 報酬は受領日から60日以内
  • 4-3 第5条が禁じる行為のうちサロンに効くもの

4-1 取引条件の明示(3条通知)

業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法により明示しなければなりません〔同法第3条第1項〕。実務では3条通知と呼ばれています。

先に触れたとおり、ここには1か月以上という限定がありません。1日だけのヘルプでも明示は要ります。また、メール等の電磁的方法で明示した場合に、特定受託事業者から書面の交付を求められたときは、遅滞なく交付しなければならないとされています〔同法第3条第2項〕。LINEやメールで条件を送っている場合、あとから書面を求められる可能性がある、ということです。

4-2 報酬は受領日から60日以内

報酬の支払期日は、特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、給付を受領した日から起算して60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において定められなければなりません〔同法第4条第1項〕。

月末締め翌月末払いのような一般的なサイクルなら、60日以内には収まります。読み落としやすいのは、かつ、できる限り短い期間内において、という部分です。60日は上限であって目標ではありません。すでに翌月10日払いで回っているサロンが、法律に60日と書いてあるからという理由で支払いを後ろへずらすのは、条文の読み方として逆になります。

4-3 第5条が禁じる行為のうちサロンに効くもの

第5条第1項が挙げているのは、受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制の5つです〔同法第5条第1項各号〕。ただし柱書に、第2条第3項第2号に該当する業務委託をした場合にあっては、第一号及び第三号に掲げる行為を除く、という除外が置かれています〔同法第5条第1項柱書〕。サロンが施術を委託する形は役務の提供の委託(第2条第3項第2号)に当たるため、実際に効いてくるのは報酬の減額・買いたたき・購入利用強制の3つです。

加えて第2項が、自己のために金銭・役務その他の経済上の利益を提供させることと、責めに帰すべき事由がないのに給付内容を変更させたりやり直させたりすることによって、特定受託事業者の利益を不当に害することを禁じています〔同法第5条第2項〕。第1項柱書の期間の限定は以下この条において同じとされているため、第2項にも1か月以上という同じ範囲がかかります〔同法第5条第1項柱書〕。

サロンの現場で論点になりやすい場面を並べると、次のようになります。

条文 禁止される行為 サロンで論点になりやすい場面
第5条第1項第2号 報酬の減額 振込手数料の差し引き。合意していても2026年1月以降の委託は減額に該当
第5条第1項第4号 買いたたき 同種の施術に通常支払われる対価に比し著しく低い歩合を不当に定める
第5条第1項第5号 購入・利用強制 自己の指定する物を強制して購入させる行為。ただし給付の内容を均質にし、又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合は除かれる
第5条第2項第1号 経済上の利益の提供要請 報酬の対象に入っていない業務や負担を求め、利益を不当に害する場合

表の右列は、条文の文言から想定される場面を並べたものです。実際に違反になるかどうかは契約内容と運用の実態で決まりますから、自店の運用が該当するかの判断は、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

5. サロンが今週やる3つの確認

要点:振込の実物、契約書の該当条項、支払明細の3点を見れば、振込手数料の論点は当面片づきます。

これから具体的な確認手順について解説します。この章では次の3点を扱います。

  • 5-1 直近の振込明細を1件開く
  • 5-2 契約書の該当条項を書き換える
  • 5-3 支払明細の出し方を決める

5-1 直近の振込明細を1件開く

最初にやることは、実際にいくら振り込んでいるかを見ることです。契約書ではなく、振込の記録のほうを開きます。報酬額と着金額が一致していれば、この論点はありません。差があるなら、その差が何なのかを特定します。

ネットバンキングの総合振込設定で、手数料が受取人負担の設定になったまま何年も回っていることがあります。今回の勧告文にあるのは、実際に金融機関へ支払う振込手数料を超える額を差し引いていたという事実の認定です〔前掲・公正取引委員会 勧告〕。引くつもりだったかどうかではなく、引かれているかどうかが見られます。設定画面を1回開けば済む確認です。

5-2 契約書の該当条項を書き換える

振込手数料を受託者負担と定めた条項があれば、2026年1月1日以降になされた業務委託については機能しません。手数料はサロン負担と書き換えるか、条項自体を削除します。

報酬額を見直して手数料相当を織り込む形にするなら、それは報酬の額の変更ですから、相手の同意を取ったうえで第3条の明示をやり直します〔同法第3条第1項〕。契約書を差し替えるタイミングは、更新月を待たずに、次の支払いの前に覚書1枚で処理する方法もあります。

5-3 支払明細の出し方を決める

月々の支払いで、報酬総額・控除項目・差引支給額が読める明細を渡しているかを確認します。第3条が求めているのは業務委託をした時点での取引条件の明示であって、毎月の支払明細の交付ではありません〔同法第3条第1項〕。それでも明細を出しておく実務上の意味は大きいところです。

何をいくら引いたかが書面で残っていれば、あとから論点になったときに説明ができます。逆に、明細がないまま端数の合わない金額だけが振り込まれている状態は、本人の不信を生みやすく、相談や申出のきっかけにもなります。フリーランス法は、この章の規定に違反する事実がある場合に、特定受託事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができると定めています〔同法第6条第1項〕。窓口は用意されている、という前提で整えておくのが現実的です。

6. まとめ:契約書ではなく、振込の実物から見る

要点:合意があっても引けません。契約書の文言より先に、直近の振込額を1件確認するところから始まります。

2026年8月26日、公正取引委員会が株式会社ジェイトップに対し、フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第1項第2号(報酬の減額の禁止)違反で勧告を出しました。実際に金融機関へ支払う振込手数料を超える額、計481,031円を特定受託事業者138名の報酬から差し引いていた事案です〔前掲・公正取引委員会 勧告〕。この法律に資本金要件はなく、従業員を使用しているサロンが業務委託美容師と契約すれば対象になります〔同法第2条第6項〕。そして令和8年1月1日以降になされた1か月以上の業務委託については、本人との合意の有無にかかわらず、振込手数料の差し引きが報酬の減額に当たる扱いになりました〔前掲・公正取引委員会 勧告〕。手をつける順番は、契約書ではなく実際の振込額からです。

  • 勧告の根拠は第5条第1項第2号。今回の事案では、合意があっても実費を超えて差し引いていた点が違反とされた
  • 令和8年1月1日以降になされた1か月以上の業務委託は、合意の有無にかかわらず振込手数料の差し引きが報酬の減額に該当
  • 対象は従業員を使用するサロン。個人事業でもスタッフが1人いれば入る
  • 取引条件の明示(第3条)に期間の限定はない。1日のヘルプでも要る
  • 報酬は給付の受領日から60日以内、かつできる限り短い期間内
  • 勧告を無視すると命令・公表、命令違反は50万円以下の罰金

コストや制度の変更が同時に走っている年です。振込手数料だけを単体で見るより、美容室経営に効く業界動向2026|コスト・制度・集客の最新まとめで他の制度変更とあわせて年内の対応順を組み直しておくと、手戻りが減ります。

7. よくある質問

Q1. 本人が「手数料は自分で持ちます」と言っている場合も駄目ですか。
勧告文の注は、令和8年1月1日以降になされた業務委託(1か月以上行うものに限る。)について、特定受託事業者との合意の有無にかかわらず、振込手数料を報酬の額から差し引くことは報酬の減額に該当することとなったと書いています〔前掲・公正取引委員会 勧告(令和8年8月26日)〕。本人の申し出であっても、合意があることを理由に差し引きを正当化することはできない、という整理です。手数料を持ちたいという申し出があるなら、差し引きではなく報酬額の設定として第3条の明示に反映する形が考えられますが、個別の設計は弁護士・社会保険労務士等にご確認ください。

Q2. 面貸しで席だけ貸している場合も対象になりますか。
サロンから美容師への報酬の支払いがなければ、報酬の減額という論点自体が生じません。判断の分かれ目は、サロンが業務を委託して報酬を払っているのか、席や設備を貸して賃料を受け取っているのかです。法律は業務委託を、事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託することと定義しています〔同法第2条第3項第2号〕。集客はサロン、指名客は美容師という混在型の場合は、報酬を支払っている部分について対象になると考えて設計しておくほうが安全です。

Q3. 過去に引いてしまった分は、さかのぼって返す必要がありますか。
今回の事案では、同社は令和8年8月5日までに、減じた額を支払っています〔前掲・公正取引委員会 勧告〕。条文上も、公正取引委員会は第5条第1項(第1号に係る部分を除く。)の違反を認めたときは、速やかにその報酬の額から減じた額を支払うべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができるとされています〔同法第8条第4項〕。返還の要否や範囲は契約内容と時期によって変わりますので、自店の過去分の扱いは弁護士・社会保険労務士等の専門家、または公正取引委員会のフリーランス取引適正化室にご確認ください。

本記事は、公正取引委員会が公表した勧告(令和8年8月26日)および指導等に関する公表資料(令和7年12月10日)、ならびに特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号/e-Gov法令検索)の条文にもとづき、2026年8月28日時点の情報を整理したものです。法令解釈や個別事案の判断を行うものではありません。自店の契約書・報酬設計・過去分の取扱いについては、弁護士・社会保険労務士等の専門家、または公正取引委員会事務総局経済取引局取引部フリーランス取引適正化室にご相談ください。

更新履歴/2026年8月28日:初版公開。公正取引委員会「(令和8年8月26日)株式会社ジェイトップに対する勧告について」、同「(令和7年12月10日)特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律に基づく指導等について」、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)の条文にもとづき作成。

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