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美容室の人件費率と利益|QBハウス2026年6月期決算

美容室の人件費率と利益|QBハウス2026年6月期決算

売上は伸びているのに、利益だけが減っていく。QBハウスを運営するキュービーネットホールディングスが2026年8月13日に公表した2026年6月期決算は、まさにその形でした。売上収益は271億5,400万円で前期比106.3%。ところが営業利益は14億9,300万円、前期比88.6%の減益です。資料を開くと、利益を押し下げた最大の項目は人件費でした。店舗を増やし、人も増やし、価格改定も進めた。それでも利益が残らなかった理由を、決算資料の内訳から追いかけます。規模はまるで違っても、お金が出ていく順番は自店にも当てはまります。

この記事を3行で解説

  • 2026年6月期は売上収益271億5,400万円(前期比106.3%)に対し、営業利益14億9,300万円(同88.6%)の増収減益。
  • 国内営業利益の減少要因1,126百万円のうち773百万円が人件費関連。既存店の人件費446百万円増、新規出店店舗の人件費212百万円、研修中人財の人件費115百万円増。
  • 当初計画に対する国内営業利益の未達523百万円のうち186百万円は、採用数の増加と残業時間の増加による店舗人件費の増加。

1. QBハウス2026年6月期決算の要点

要点:売上収益271億5,400万円(前期比106.3%)に対し、営業利益は14億9,300万円(同88.6%)。増収でありながら減益で着地しました。

これからQBハウス2026年6月期決算の要点について解説します。

  • 1-1 全社は増収、利益は前期割れ
  • 1-2 当初計画に対しても利益は届かなかった

1-1 全社は増収、利益は前期割れ

キュービーネットホールディングスの2026年6月期は、売上が伸びたのに利益が減る決算でした。

項目 2025年6月期 2026年6月期 前期比
売上収益 25,543百万円 27,154百万円 106.3%
 国内 20,641百万円 21,675百万円 105.0%
営業利益 1,685百万円 1,493百万円 88.6%
 国内 1,529百万円 1,437百万円 94.0%
当期利益 1,022百万円 803百万円 78.6%

会社は増収の理由として、新規出店・既存店成長・国内外での価格改定の3つを挙げています。一方で減益の理由には、人財投資、海外新規進出国への先行投資、香港事業の来店客数回復の遅れを挙げました。売上をつくる打ち手はすべて効いているのに、利益だけが前期を割った。この一点が今回の決算の性格です。

1-2 当初計画に対しても利益は届かなかった

当初計画と比べると、ずれ方はもっとはっきりします。売上収益は計画27,350百万円に対して計画比99.3%とほぼ着地したのに、営業利益は計画2,200百万円に対して1,493百万円、計画比67.9%にとどまりました。

売上はほぼ計画どおりなのに利益は3分の2しか出ていない、という数字の並びです。売上の未達だけでは説明がつかない何かが、費用側で起きていることになります。

出典:キュービーネットホールディングス株式会社「2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年8月13日公表・PDF)/同社「2026年6月期 決算説明会資料」(2026年8月13日公表・PDF) 一覧:キュービーネットホールディングス 決算関連資料

2. 減益の中身は人件費だった

要点:国内営業利益の減少要因1,126百万円のうち、既存店の人件費446百万円、新規出店店舗の人件費212百万円、研修中人財の人件費115百万円が人件費関連です。

これから減益の中身について解説します。

  • 2-1 既存店:人員増加で446百万円
  • 2-2 新規出店:売上より先に出ていく212百万円
  • 2-3 育成中スタッフ:研修期間の115百万円

2-1 既存店:人員増加で446百万円

国内の営業利益は前期比92百万円の減少ですが、その中身は増加要因1,034百万円と減少要因1,126百万円のぶつかり合いでした。

増加要因の内訳は、既存店の成長763百万円と、今期出店した店舗の売上収益271百万円。売上づくりは成功しています。対する減少要因の筆頭が、既存店の人件費(人員増加)446百万円です。同じ既存店で、売上が763百万円増えた一方、人件費が446百万円増えた。増えた売上の6割近くが人件費に持っていかれた計算になります。

同社は採用を強化しており、通期の店舗配属人財は300人で前期比89人増、計画比でも45人増でした。人を採れたこと自体は計画の達成です。ただ、採れた人がフルに稼働して売上に変わるまでには時間がかかる。その時間差が、次に見る育成人財の人件費115百万円という形でも表れています。

2-2 新規出店:売上より先に出ていく212百万円

新規出店にともなう費用も、利益を押し下げました。新規出店店舗の人件費212百万円、原価181百万円、新店販促費56百万円です。同期間の新規出店は37店舗、閉店は10店舗で、純増27店舗と計画どおりの着地でした。

ここで新店がもたらした売上収益は271百万円。人件費212百万円だけで、新店売上のかなりの部分が消えています。出店を決めた時点で人件費と販促費は先に確定し、売上はあとから積み上がる。この時間差は、1店舗目から2店舗目へ進むサロンでも構造は変わりません。多店舗化でつまずく形は美容室が潰れる原因とは|倒産データと潰れない店の設計でも整理しています。

2-3 育成中スタッフ:研修期間の115百万円

3つ目が、育成人財の人件費115百万円の増加です。同社の資料では、これは育成人財として採用したスタイリストの研修期間の人件費であり、研修中の人数が増えたことで販管費が膨らんだと説明されています。

売上をまだ持たないスタッフの給与が、そのまま経費に乗る。美容室でいえば、アシスタントやスタイリストデビュー前のスタッフが増えた期の損益と同じ形です。人を育てる方針そのものは間違っていなくても、育成中の人数が一時期に偏ると、その期の利益は必ず削られます。

なお同社は2027年6月期について、採用時期の平準化と育成人財在籍数の最適化により、育成人財の人件費は年間71百万円の減少を見込むとしています。採用を減らすのではなく、採用の山を平らにするという方針です。

出典:キュービーネットホールディングス株式会社「2026年6月期 決算説明会資料」(2026年8月13日公表・PDF) 一覧:キュービーネットホールディングス 決算関連資料

3. 計画未達の内訳が示す「順番」

要点:国内営業利益の計画比未達523百万円の内訳は、売上収益の計画未達335百万円、店舗人件費の増加186百万円、その他経費の増加2百万円でした。

これから計画未達の内訳について解説します。

  • 3-1 売上の未達と並ぶ大きさの人件費増
  • 3-2 需要が月末に偏ると人件費は下げにくい

3-1 売上の未達と並ぶ大きさの人件費増

国内の営業利益は計画1,960百万円に対して実績1,437百万円、523百万円の未達でした。その内訳は、売上収益の計画未達が335百万円、店舗人件費の増加が186百万円、その他経費の増加が2百万円です。人件費だけで未達額の3分の1以上を占めています。

会社はこの186百万円の中身を、人財採用数の増加と残業時間の増加による店舗人件費の増加と説明しています。売上が計画に届かなかった理由には、酷暑、気温低下、台風などの天候影響を挙げました。国内の売上収益の計画達成率は98.5%です。

天候は動かせません。動かせるのは、売上が計画から2%ずれたときにシフトと残業をどう縮めるか、という側です。今期はそこが追いつかず、売上の未達と人件費の超過が両方から利益を削りました。

3-2 需要が月末に偏ると人件費は下げにくい

もう一段掘ると、シフトが縮められなかった背景が出てきます。同社は全年齢層へ拡大したツキイチ割引キャンペーンの利用が想定を大きく超え、利用率が当初想定8%に対して実績31%になったと開示しています。その結果、来店需要が月末へ集中し、店舗運営と月次業績の変動要因になったと説明しました。

需要が月末に山をつくると、店舗はその山に合わせて人を置くことになります。山に合わせた人員は、山以外の日には余ります。売上の総量が変わらなくても、来店日が偏っているだけで人件費は膨らむ。なお同社は、人件費増の理由としては人財採用数の増加と残業時間の増加を挙げており、割引施策と人件費増を直接結びつけてはいません。ただし、来店が月末へ寄れば山に合わせた人員配置が必要になるという関係そのものは、規模を問わず成り立ちます(この接続はSALOG編集部の見立てです)。

2027年6月期に向けて同社が最初に挙げた打ち手も、月末偏重の緩和策の実施と、人財配置・シフト最適化による既存店の機会損失の解消でした。

出典:キュービーネットホールディングス株式会社「2026年6月期 決算説明会資料」(2026年8月13日公表・PDF) 一覧:キュービーネットホールディングス 決算関連資料

4. 自店に翻訳する3つの手順

要点:人件費率を今の実数で出す、増員と出店の回収期間を先に決める、需要の偏りを先にならす。決算から読み取れる順番はこの3つです。

これから自店への翻訳の仕方について解説します。

  • 4-1 人件費率を「今の実数」で出す
  • 4-2 増員・出店は回収期間を先に決める
  • 4-3 需要の偏りを先にならす

4-1 人件費率を「今の実数」で出す

最初にやることは、他店の目安を探すことではなく、自店の人件費率を今の数字で出すことです。一般的には、給与・賞与・法定福利費など人にかかる費用の合計を売上高で割って100を掛けた比率を指します(どこまでを人件費に含めるかは自店の会計処理に合わせてください)。

QBハウスの決算が示したのは、人件費が増える理由が一つではないという点でした。既存店の増員、新店の先行人件費、育成中スタッフの人件費、そして残業。この4つは、まとめて人件費という1行にされると見分けがつきません。給与台帳を、既存スタッフ・新規採用・育成中・残業手当の4つに割って、それぞれが売上に対して何%かを出す。ここまで割らないと、どこを締めるかの判断ができません。

売上・原価・人件費・その他経費の関係を先に整理したい場合は、美容室の損益分岐点の計算方法|赤字と黒字の境界線を知るの手順に沿って、固定費としての人件費がどこまで許容できるかを先に出しておくと判断が速くなります。

4-2 増員・出店は回収期間を先に決める

次に、人を増やすとき・店を増やすときに、何か月で回収するかを先に決めておくことです。

QBハウスの新店は、売上収益271百万円に対して、人件費212百万円・原価181百万円・新店販促費56百万円の計449百万円が計上されています。この年に限れば、新店は利益を押し下げる側に立ちました。それでも同社が出店を続けたのは、通年で稼働した翌期に貢献が出る前提があるからです。実際、2027年6月期の計画では、新規出店店舗の通年貢献の継続が売上収益への影響として挙げられています。

裏を返せば、回収の時期を決めずに増員や出店をすると、赤字の期がいつ終わるのかを誰も答えられなくなります。採用の前に、その人の技術売上がいくらになったら回収完了なのか、それは入社何か月目を想定しているのか。この2つを紙に書いてから採用に動く、という順番です。

4-3 需要の偏りを先にならす

3つ目は、割引やキャンペーンを出す前に、それが来店日をどこに寄せるかを考えることです。

ツキイチ割引の利用率が想定8%に対して実績31%になり、来店が月末に集中した。これは施策が効かなかったのではなく、想定より効きすぎた結果です。効きすぎた分だけ、店舗は月末に人を置く必要が出ました。

美容室でも、給料日後の週末やクーポンの有効期限日に予約が固まる形はよく起きます。有効期限を月内で分散させる、平日限定の受け皿を別に用意する、次回予約を閑散日に寄せる。こうした設計は集客の話に見えて、実際には人件費の話です。人件費と並んで固定費を押し上げる最低賃金の動きは東京の最低賃金1280円へ答申|10月改定見込みと美容室対策で整理しています。

5. まとめ:規模が違っても順番は同じ

要点:売上が伸びても、人件費が先に動けば利益は残りません。人件費の中身を4つに割り、回収期間を決め、需要の偏りをならす順番です。

2026年6月末で国内612店舗(うちQB HOUSE 587店舗)を構えるチェーンと個人サロンでは、当然ながら数字の桁も費用の構造も違います。QBハウスは低価格・高回転の業態で、会計基準もIFRSで、2027年6月期には外形標準課税による国内57百万円の負担増も見込まれるなど、大企業特有の費用が乗ります。ここで挙げた金額をそのまま自店の目安として使うことはできません。

それでも、増収と減益が同時に起きた理由の並び方は、どの規模でも共通です。売上を増やす打ち手はすべて当たっていた。人も計画以上に採れた。それでも、人件費が売上より先に動いたぶんだけ利益が減った。同社自身が2026年6月期を成長のための基盤拡大を利益に転換し切れなかった1年と総括し、2027年6月期をその基盤を利益へ転換する1年と位置づけています。

原価の側で何が起きているかは美容室の材料費高騰は続くのか|ミルボン2026上期決算にまとめました。人件費と原価の両方を並べて見ると、値上げでどこまで戻せるかの見当がつきます。

出典:キュービーネットホールディングス株式会社「2026年6月期 決算説明会資料」(2026年8月13日公表・PDF) 一覧:キュービーネットホールディングス 決算関連資料

この記事の要約と重要ポイント

キュービーネットホールディングスの2026年6月期は、売上収益271億5,400万円(前期比106.3%)と増収の一方、営業利益は14億9,300万円(同88.6%)と減益でした。国内営業利益の減少要因には既存店の人件費446百万円、新規出店店舗の人件費212百万円、育成人財の人件費115百万円が並びます。当初計画に対する国内営業利益の未達523百万円のうち186百万円は、採用数の増加と残業時間の増加による店舗人件費でした。売上をつくる施策は当たっていても、人件費が先に動けば利益は残りません。

  • 増収でも減益になる主因は、売上と人件費の発生時期のずれ。
  • 人件費は「既存店の増員」「新店の先行人件費」「育成中の人件費」「残業」に割って見る。
  • 割引施策の設計は、来店日の偏りを通じて人件費を左右する。
  • 掲載の金額は同社固有の数値であり、個店の目安としては使えない。

よくある質問

Q1. 美容室の人件費率は何%が適正ですか。
業種平均の一律の正解はなく、業態・立地・スタッフ構成で変わります。この記事で紹介したQBハウスの金額も、低価格・高回転・多店舗というモデル固有のものです。まずは自店の人件費を既存スタッフ・新規採用・育成中・残業手当の4つに分け、それぞれの売上に対する比率を出したうえで、損益分岐点から逆算した許容額と比べる進め方が現実的です。

Q2. QBハウスの決算から、美容室の仕入れ値や賃金が上がると言えますか。
言えません。今回の決算で増えたのは同社の店舗人件費であり、他社の賃金水準や仕入れ条件が確定したわけではありません。ここから読み取れるのは、採用を増やし出店を進めた企業で、売上増より人件費増が先に出たという事実関係までです。

Q3. 人が採れたのに利益が減るのは失敗ですか。
決算資料では、店舗配属人財が前期比89人増・計画比45人増と、採用は計画を上回っています。同社はこの期を基盤拡大の年と位置づけ、2027年6月期に営業利益1,700百万円(前期比113.8%)を計画しました。採用が利益を圧迫する期間をあらかじめ見込んでいるかどうかが、失敗との分かれ目になります。

免責:本記事は上場企業が公表した決算短信・決算説明会資料と一般的な経営情報をもとにSALOG編集部が構成したものです。記載の数値は2026年8月13日公表時点のものであり、今後の開示で変動する可能性があります。個別の人件費設計・労務管理・税務の判断については、社会保険労務士・税理士など専門家にご相談ください。本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

更新履歴:2026年8月20日 公開。

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