サロン専売品最大手のミルボンが、2026年8月10日に上期決算を発表しました。営業利益は前期比+72.7%の大幅増益で、通期予想も上方修正。ただ、この数字を「業界全体が好調」と読むと足をすくわれます。国内売上は+2.8%にとどまり、同社は資料のなかで国内の美容室市場の伸び悩みは継続と明記しました。さらに通期見通しには、中東情勢によるコスト増5億円が織り込まれています。この記事では、最大手の決算資料から下期の仕入れ環境をどう読み、自店のメニュー価格をどう設計し直すかを、SALOG編集部が整理します。
- ミルボンの上期は売上高268億7,800万円(+8.3%)・営業利益33億4,700万円(+72.7%)だが、けん引役は海外で国内は+2.8%。
- 同社は通期見通しに中東情勢起因のコスト増5億円を織り込み済み。下期は原価が上がる前提で計画が組まれている。
- 打ち手は値上げ一択ではない。1回の支払額を抑えたい客と、良いものなら払う客を、別メニューで受ける設計が要る。
1. ミルボン2026年上期決算の要点
要点:上期は売上高268億7,800万円(前期比+8.3%)、営業利益33億4,700万円(同+72.7%)。営業利益率は7.8%から12.5%へ改善し、通期予想も上方修正されました。
| 項目 | 2026年上期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 連結売上高 | 268億7,800万円 | +8.3% |
| 連結営業利益 | 33億4,700万円 | +72.7% |
| 営業利益率 | 12.5% | 7.8%→12.5% |
| 国内売上高 | 189億9,300万円 | +2.8% |
| 海外売上高 | 78億8,400万円 | +24.7% |
これからミルボンの2026年12月期上期決算の中身について解説します。
- 1-1 全社の数字は大幅増益
- 1-2 通期予想も上方修正された
1-1 全社の数字は大幅増益
ミルボンの2026年12月期第2四半期累計は、売上高が268億7,800万円で前期比+8.3%、営業利益が33億4,700万円で同+72.7%でした〔株式会社ミルボン「2026年12月期第2四半期決算説明資料」2026年8月10日公表〕。営業利益率は前年同期の7.8%から12.5%へ大きく改善しています。
増益の中身を見ると、増収による粗利増が12億9,500万円、売上総利益率の上昇が3億3,900万円の押し上げ要因でした。一方で物流費は1億3,600万円、人件費は2億3,400万円のマイナス要因として効いています。原価と人件費が重いという構造そのものは、サロンの損益計算書と同じ形をしています。
増益要因にはもう一つ、販促関係費用の減少2億8,000万円があります。同社はこれを販管費の一部計上時期の期ずれによるものと説明しており〔同資料〕、増益幅のすべてが実力ベースというわけではありません。
1-2 通期予想も上方修正された
同社は通期予想を、売上高556億円(従来計画548億円)、営業利益65億5,000万円(同63億円)へ引き上げました〔同資料〕。あわせて18億円を上限とする自己株式取得も決定しています。
数字だけ見れば明るいニュースです。ただ、ここから先が美容室にとって本題になります。
2. 国内は+2.8%止まり「美容室市場の伸び悩みは継続」
要点:国内売上は189億9,300万円で+2.8%。同社は資料で国内の美容室市場の伸び悩みは継続と明記し、成長の中心は海外(円ベース+24.7%)でした。
これから決算の国内部分と、そこから読める市場環境について解説します。
- 2-1 伸びをつくったのは海外だった
- 2-2 美容にまわるお金の比率は下がっている
2-1 伸びをつくったのは海外だった
地域別に見ると、国内売上高は189億9,300万円で前期比+2.8%、海外は78億8,400万円で同+24.7%(現地通貨ベース+16.7%)でした〔同資料〕。米国は円ベースで+45.0%と高い伸びを示しています。全社の大幅増益をつくったのは海外事業であって、国内市場の回復ではありません。
国内のカテゴリ別(出荷額ベース・上期)は、ヘアケア用剤が+4.4%、染毛剤が△0.2%、化粧品が△9.5%でした〔同資料〕。染毛剤について同社は、低価格帯と高付加価値帯への二極化が続いていると説明しています。カラーの単価をどう組むかという問題が、メーカー側の資料にもはっきり表れている形です。
2-2 美容にまわるお金の比率は下がっている
同資料には、消費支出に占める理美容サービス・用品の比率を示す美容消費係数の推移も掲載されています。2026年第1四半期は2.81%で、ピークだった2023年第4四半期の3.11%から低下傾向にあります〔同資料。原データは総務省「家計調査」、指標の定義・集計は株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー〕。
家計の中で美容に配分される割合そのものが縮んでいるということです。客数が戻らない、来店サイクルが伸びるという現場の実感は、この数字と整合します。関連する現場データは美容室経営に効く業界動向2026のまとめでも整理しています。
3. 下期の仕入れ環境をどう読むか
要点:同社は中東情勢に起因する原材料・資材のコスト増5億円を通期見通しに織り込みました。下期は原価が上がる前提で最大手が計画を組んでいます。
これから下期の仕入れ環境と、サロンが備えるべき点について解説します。
- 3-1 コスト増5億円が通期計画に入っている
- 3-2 9月10日に新カラーブランドが発売される
3-1 コスト増5億円が通期計画に入っている
通期の営業利益増減要因のうち、中東情勢の影響はマイナス5億円として計上されています〔同資料〕。同社は調達・供給体制について、現時点で調達への大きな影響は発生していないとしたうえで、一部の原材料・資材および物流コストの上昇リスクは継続して注視すると記載しました。
ここで押さえておきたいのは、これがミルボンの損益の話であって、サロンの仕入れ値が何%上がると確定した話ではないという点です。ただ、最大手が下期の原価上昇を前提に計画を組み直した以上、代理店経由の価格改定や商品構成の入れ替えが起きる可能性は高まります。自店の材料費が今どの水準にあるかを先に把握しておくと、通知が来てから慌てずに済みます。数え方は経費と材料費率の目安を整理した記事にまとめています。
3-2 9月10日に新カラーブランドが発売される
同社は新ヘアカラーブランド「プレトワ(PRETOWA)」を2026年9月10日に発売予定と公表しました。発売延期にともない、2026年の売上目標は10億円から7億円へ、販売期間は7カ月から4カ月へ修正されています〔同資料〕。
下期は、この新ブランドを軸にしたカラーの高付加価値メニューの提案が代理店経由で入ってくる時期にあたります。提案をそのまま受けるか、自店の客層に合わせて組み替えるかで、下期のカラー粗利は変わります。価格改定をお客様にどう説明するかはカラー剤の値上げを踏まえた価格改定の根拠づくりで扱っています。
4. 美容室が下期に打つべき3つの手
要点:全メニュー一律の値上げではなく、原価が動くメニューを特定し、支払い方の選択肢を増やし、試せる入口を用意する。この3つを分けて設計します。
これから下期に向けた具体的な打ち手について解説します。
- 4-1 原価が動くメニューを先に特定する
- 4-2 1回の支払額を抑えたい客の受け皿をつくる
- 4-3 試せる入口を用意する
4-1 原価が動くメニューを先に特定する
値上げの議論に入る前に、どのメニューの原価が動くのかを切り分けます。国内の出荷額ベースでヘアケア用剤が+4.4%、染毛剤が△0.2%と動きが違う以上〔同資料〕、影響の出方もメニューごとに違います。
カラー、トリートメント、店販の3つについて、直近3カ月の使用量と仕入単価を出してみると、全体の材料費率だけを見ていたときには気づかなかった偏りが見えてきます。一律5%上げではなく、動いたメニューだけを動かす。そのほうが説明もしやすくなります。
4-2 1回の支払額を抑えたい客の受け皿をつくる
同資料には、消費者側の変化として、1回の支払額を抑えたい、失敗したくないのでお試しが先、必要なものは高額でも購入する、という3つの傾向が挙げられています。そのうえで、メニュー価格のオプション化、体験・トライアルの機会、店舗支払とは別の購入環境という3つの環境整備が重要だと記載されています〔同資料〕。
同じ店に、支払額を抑えたいお客様と、良いものなら払うお客様が混在しているということです。1本の価格表で両方を満足させるのは無理があります。基本メニューは据え置き、こだわりたい人向けのオプションを別立てにする。この分け方だけで、単価を上げながら離反を抑えられる余地が出てきます。
4-3 試せる入口を用意する
失敗したくない、まず試したいという心理が強まっているのなら、いきなりフルメニューを勧めるより、小さく試せる入口を置くほうが通ります。既存客への新カラーの提案でも、初回はハーフサイズや部分施術から入るという設計が有効です。
9月10日以降に新しいカラーの提案が来たとき、全顧客に一斉に案内するのではなく、まず試せる形にして反応を見る。下期はその進め方のほうがリスクが小さくなります。
5. まとめ:最大手の前提を自店の価格設計に翻訳する
要点:ミルボンの上期は増益でも国内は+2.8%。下期は原価上昇を織り込んだ計画になっており、サロン側もメニュー単位での価格設計の見直しが要ります。
- 上期は売上高268億7,800万円(+8.3%)、営業利益33億4,700万円(+72.7%)。通期予想も上方修正。
- 国内は+2.8%にとどまり、同社は国内の美容室市場の伸び悩みは継続と明記。
- 通期見通しには中東情勢起因のコスト増5億円が織り込まれている。
- 美容消費係数は2026年Q1で2.81%。2023年Q4の3.11%から低下傾向。
- 打ち手は、原価が動くメニューの特定、支払い方の選択肢、試せる入口の3点。
よくある質問
Q1. ミルボンが増益なら、美容室の景気も良くなっているのですか?
全社の増益をつくったのは海外事業です。国内売上高は189億9,300万円で前期比+2.8%にとどまり、同社は資料で国内の美容室市場の伸び悩みは継続と記載しています〔同資料〕。国内の市場環境が改善したことを示す数字ではありません。
Q2. 材料の仕入れ値は下期に必ず上がるのですか?
確定した情報ではありません。今回公表されたのは、ミルボンが自社の通期見通しに中東情勢起因のコスト増5億円を織り込んだという事実です〔同資料〕。実際の卸価格の改定は各メーカー・代理店の判断によります。取引先からの正式な通知を確認してください。
Q3. 下期に向けて、まず何から手をつけるべきですか?
自店の材料費率をメニュー別に出すところからです。全体の材料費率だけでは、どのメニューで利益が削られているかが分かりません。カラー・トリートメント・店販の3つに分けて直近3カ月を集計すると、価格を動かす順番が見えてきます。
出典:株式会社ミルボン「2026年12月期第2四半期決算説明資料」(2026年8月10日公表・PDF) 一覧:株式会社ミルボン 決算短信等
免責:本記事は上場企業が公表した決算説明資料と一般的な経営情報をもとにSALOG編集部が構成したものです。記載の数値は2026年8月10日公表時点のものであり、今後の開示で変動する可能性があります。個別の価格設定・仕入条件・税務の判断については、取引先および税理士など専門家にご相談ください。本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
更新履歴:2026年8月15日 公開。


